20年春夏コレクションからTC(森山和之社長)が自社でビジネスを新たにスタートした「ツモリチサト」が、受注生産による卸売りと顧客への販売を順調に進めている。20~21年秋冬の展示会と顧客受注会では、来場者も受注数も1回目の春夏実績を上回った。無駄のないサステイナブル(持続可能)な運営としても注目だ。
【関連記事】「ツモリチサト」20年春夏から再開 顧客向け受注会も
ツモリチサトは長年、エイ・ネットが生産販売してきたが、19年秋冬で終了し店も閉店した。しかし海外FC店からの要望をきっかけにTCが自力で再開。小売店にも個人の顧客にも全て受注生産・販売とすることで、ビジネスがうまく回り始めた。
展示会と顧客受注会は自社に会場を作り、デザイナーの津森千里も接客するなど手作りで進めている。20~21年秋冬は「不思議の国のアリス」の世界に着想した手描きのイラスト柄、凝った織物、手刺繍などの商品を約150型用意した。以前から取引のあった専門店を招き、顧客受注会には熱心なファンをはじめ口コミで知った客が前回の1.5倍も集まった。卸売りも顧客にも、価格は多少高くてもツモリならではのスペシャルなアイテムが人気だった。
この形態にしたメリットは大きい。デザイナーブランドとして、MDや売り上げ前年比を気にせず、一点だけでもデザイナーが作りたいものができる。「肩の力を抜いて、客と対面してやりとりしながら、お互いウィンウィンの関係を築く方法論ができた」と森山社長。香港、台湾、ロシアのFC店を含めて生産のロットがクリアできているからではあるが、この手法をたんたんと進めたいとする。津森も「作り続けられること、私らしい服を求められることがうれしい」と話す。
もう一つ分かったのは、生産にロスがなくサステイナブルな事業だということだ。個人の顧客も自分が足を運んで注文し、商品を何カ月も待つことになるが、森山社長はその「世の中の流れとは逆のようなアナログな手法」も、今にマッチしているのではと見る。サステイナブルを発信しているわけではないが、消費者の気持ちには響いているようだ。また秋冬の商品にはプラスチック系の素材はできるだけ使わず、シルクなど天然繊維に変えた。アウターのつめ物に真綿を使うなどユニークな素材をアピールした。
こうしたことから新しい試みとして、伊勢丹オンラインストアによる秋冬コレクション受注販売を2月28日~3月2日午前10時に実施することが決まった。
