15年2月末をもって、大阪を代表するセレクトショップ「ザ・ファースト」(フィット)が全店閉鎖、廃業となる。このニュースが流れた時、多くの関係者が驚いた。関西の主要なファッションビルの好立地に店があり、安定した顧客と知名度もあっただけに惜しむ声が相次いだ。
鍛治珠恵社長にはいろいろな思いが入り交ざっているだろうが、「私たち一代だけの店として、惜しまれてやめる」気持ちという。
鍛治珠恵社長
ザ・ファーストの足跡を振り返ってみる。創業は36年前。大阪のレディス専門店、ベルモードにいた鍛治猛顧問(前社長)と鍛治珠恵社長が立ち上げ、その後は二人三脚で30店のセレクトショップを作り上げた。
1号店は阿倍野アポロで、靴のセレクトショップだった。当時、靴屋はメンズ、レディス、子供と何でもありが普通な中、いち早くセレクト業態としてスタートした。阿倍野アポロは現在、映画館ビルのイメージが強いが、昔はファッションショップを多く集積していた。
スキップハウスの徳見さん、もくもく(オリーブデオリーブ)の武甕さん、マリアテレサの大平さんなど、後に大阪カジュアルをリードする若手経営者が集まる場でもあった。
ザ・ファーストが優れた点は、アパレルだけでなく、シューズ、ネイルという分野にも強かったこと。シューズでは早くから欧州に直接買い付けに行き、独自の仕入れ、販売を確立してきた。どこまでも黒、モノトーンにこだわった品揃えも際立った特徴だった。ある意味、その集大成的な店「ブラックエディション・ザ・ファースト」(なんばパークス)は崇高美すら感じさせる作りこんだ内装が印象的だった。
3月以降、鍛治社長はこれまでの人脈を大切にしながら、今までできなかったことをぽちぽちと始めようと考えている。新しい人生で花が開くことを期待したい。
古川富雄 大阪支社編集部長が、関西のファッションビジネス情報の周辺、裏を紹介