素材から始める持続可能なファッションビジネス⑧

2018/10/14 06:30 更新


【リアルファーとフェイクファー】動物福祉と環境保全で議論生む

 この数年、ラグジュアリーブランドからグローバルSPA(製造小売業)まで、リアルファーの使用を取りやめるファッションブランド、企業が相次いでいる。動物福祉に立脚したもので、代わって〝エコファー〟の名でフェイクファーが広がった。しかし、その是非をめぐる議論は尽きない。フェイクファーの多くは石油に由来し、自然環境への負荷が懸念されるからだ。

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 昨年、グッチが「ファーフリー」を宣言したことは、一般消費者の間でも大きな話題になった。アンチファーは以前からあったが、生きたまま毛皮を剥ぐなど一部で問題になっている残酷な製造方法が、メディアやSNSを通じて発信され、悪いイメージが一気に広がった。日本毛皮協会はリアルファーへの偏見を危惧し、正しい理解を促すことに注力する。動物福祉の観点から飼育業者に厳しい基準を設け、認証を与える事業などにも取り組む。

 フェイクファーはどうか。昨今はエコファーという名前が定着したが、地球環境に良いとは言い難い。フェイクファーは、石油を原料とするポリエステルやアクリルを使っている。石油は枯渇の恐れがある資源で、地球温暖化の一因とされる二酸化炭素を排出する。土や海の中で分解されにくく、地球環境を汚染する。国際毛皮連盟も、7月に出したリリース「ファッションはフェイクファーから撤退する必要がある」でこれに言及。フェイクファーは生分解性が低く、プラスチックによる環境汚染や動物が生息するエコシステムを破壊すると訴えるとともに、リアルファーの生分解性の高さを強調した。ただ、リサイクル合繊や植物由来合繊など地球環境に配慮した合繊の開発は進んでおり、いずれサステイナブル(持続可能)な素材を使ったフェイクファーが出てくることも期待される。

 伊テキスタイル企業では、ウールや獣毛をパイル織り・編みし、たっぷり毛足を引き出した生地をファー代替として提案している。サステイナビリティー、風合いともに一格上の「ラグジュアリーエコファー」としてアピールする企業もある。

 ファー以外にも、モヘヤやダウンなど動物福祉の観点で注目される素材がある。素材の代替だけでなく、認証制度や循環システムの構築などで改善が進む。

 賛成派と反対派の対立ばかりが目立つが、何をよりどころにするかは個々のブランド、企業の選択になる。

和歌山・高野口産地のフェイクファーは本物と見まがう品質の高さで、海外ラグジュアリーブランドも使用

(繊研新聞本紙9月19日付)



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