産地と工場の存続を――桐生のジャカード織物メーカー、須裁(須永康弘社長)は自社ブランド「ジャカード・ワークス」の販売を広げている。バッグのほか、新たに加えたポーチとクッションカバーがあり、協業にも意欲的だ。職人技を継承するため、「ジャカードを身近に感じてもらいたい」思いを込める。
(関麻生衣)
同社は1906年創業。シルクの帯地など和装用に始まり、現在は国内のレディス向けを主に生産する。ジャカード・ワークスは22年に立ち上げた。1本ずつ糸を織り込んで美しい色や柄を作るジャカード。各工程に職人がおり「地域を支えている。ジャカードで物作りし続けないと技術が絶え、産地が続かない」。その危機感から「付加価値をつけ、(一般消費者に)届ける手段を自社で持ちたい」と始めた。20年には工場の一角を改装し、アトリエショップも開設した。
商品は現在、バッグを販売する。ジャカードはブランド独自に企画し、アーカイブ生地やリサイクル繊維も使って環境にも配慮する。ペーズリーや花柄のカットジャカード、ぷつぷつとした糸玉を散りばめたもの、軽やかなふくれ織りなど様々に揃う。出目金のしっぽの部分をフリンジにしたタイプは、片面をチェックのジャカードで切り替えた。チェックは素材を線の部分と四角の部分とで変えて染め分け、色や質感の違いも楽しい。S、M、Lがあり、中心価格は8000円台~1万円台半ば。
協業は「ジャカードを身近に感じてもらえるように使うシーンを増やしたい」との願いから。最近では、アーティストの高橋信雅氏とトートバッグを作った。ヤギのイラストを均一に並べたデザインなど3柄、3色を出す。発売は9月末から10月を予定し、予約を6月12日から受けている。価格は3万5000円前後を想定する。東京・恵比寿の花屋「くさかんむり」とは草花を入れるバッグや花束を包むクロスを開発し、母の日にも喜ばれているという。
販路は自社ECやライフスタイルショップ「工場十貨店」など。昨年には米ニューヨークで期間限定店を開いた。好反応だったため、今後は海外も開拓したい考えだ。