人権や環境に配慮した服作りを通し、より良い社会の実現を目指す「やさしいせいふく」は、中高生と大学生が運営する。メンバーは関東圏、中部圏、海外在住など様々で、年齢と場所の垣根を越えた学生団体だ。
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こだわりは〝透明性〟
大人や企業の支援を得ながら行う主な活動内容は二つ。中高生を対象にした、人権・環境面に配慮して作られたイベントTシャツの販売と、アパレル産業の生産過程における課題を提起する講演活動だ。
活動を通して「未来の購買層である若者に消費行動の選択肢を提供したい」と考える。
販売するTシャツの特徴は生産と価格の〝透明性〟。綿花畑から製造工場まで特定できるトレーサビリティー(履歴管理)を持ち、GOTS(オーガニックテキスタイル世界基準)認証取得済みのオーガニックコットンを使用する。
インドの農家や工場を選ぶ際、やさしいせいふくはオンラインで視察した。生産者の労働環境に配慮した工場に生産を委託し、公正な価格で取引している。
販売価格は仕入れ値や送料、オーガニックコットン農家への寄付額、やさしいせいふくへの還元額など内訳を公開する。「Tシャツを作る人と買う人に価格の内訳を公開することで、不当に搾取していないと証明するため」と代表の福代美乃里さんは話す。
22年4月から販売を始め、「500枚弱は売れた」という。ビジネスとして成り立たせる難しさも学んだが、「現地の人たちとのやり取りを通し、服作りの理想の形を見つけられた」と振り返る。
講演会は全国の教員が集まるイベントや中学校、高校など様々な場所で行う。原料から服になるまでの複雑な生産過程を知ってもらい、生産者に近づくほど利益を得にくいアパレル産業の課題を提起する。
声を上げ続ける
今年は待望のインド視察を予定している。今まではオンラインのやり取りだったが、現地の綿花畑や工場を取材し、自身の目で見たこと、感じたことを伝える活動に熱量を注ぐ。
今後の活動はメンバーで話し合っている最中だ。世代間の思いの強弱や活動資金集めが課題だが、最終的な目標は「服に関わる全ての人々の意識を変え、笑顔が生まれる服作りを世界中に浸透させること」。「自然、人、世界にやさしい」服作りの形を作ることだ。
今後も「持続可能なアパレル産業の構築を目指し、声を上げ続けていく」。
(小坂麻里子)