【店長に役立つページ】スタージョイナスのSV・店長会議 世の流れ、会社の動きを自分事に
米国発のスニーカー・アパレルショップ「アンディフィーテッド」などを展開するTSIホールディングスグループのスタージョイナス(静岡市、松下一英社長)。ここ数年、右肩上がりの成長を続ける同社だが、教育・研修の質の高さにおいても業界内でひそかな注目を集めている。グループ企業で研修を担うことがあるほか、外部の小売業にノウハウも伝授する。そんな同社のスーパーバイザー(SV)・店長が集う会議を取材した。店長職を務める読者の皆様に役立つであろう知識や考え方を紹介する。
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■店長会議 講師兼進行役 藤田翼経営企画室GM
◇テクノロジー×アパレルを学ぶ
当社のイニシアチブキーワードの一つが〝デジタル〟です。今後デジタルを強化していくなか、これから説明するキーワード四つと世の流れをを知っておいてください。
一つ目がオムニチャネル。ネットだけでなく、店舗などリアルの場を含めたあらゆるチャネルを連携させて、お客様との接点を持ち、売り上げをアップさせる方法のこと。
二つ目が、O2O(ネットと実店舗の相互送客)。オムニチャネルとの区別を理解してください。オンラインからオフライン、あるいはその逆で、お客様を誘導する施策を意味します。例えば、ショップのSNSを更新して店舗への来店を促したり、紙のチラシを配ってECサイトを広告したり、店舗にSNSやECのQRコードを載せた販促物を設けることなどがそうです。上長から「O2O施策考えてみて」と指示があったら、店からEC、ECから店舗それぞれにお客様を誘導するための施策を考えてみてください。
三つ目はOMO(オンラインとオフラインの融合)。O2Oとの違いを一言で表すとするなら、〝分断から融合〟へシフトしているということ。オンラインとオフラインを別々にせず、同一線上にあるととらえてビジネスを展開していくべきだよねという流れに変わってきています。
四つ目は、DtoC(メーカー直販)。メーカーやブランドが直接、消費者に商品を届けることができるビジネスのことだと理解しておいてください。
DtoCが加速してきたことで、小売業が存在する意義や価値も変わってきました。実店舗には、「商品の購入場所」「広告」としての役割のほかに、近年は「顧客とのロイヤルティー構築」という新しい役割が加わってきました。店舗で商品を買ってもらえなかったけど、その時に受けた接客がきっかけで、後々ECで買っていただけるかもしれない。販売現場に立つ人々が、この新たな役割を理解しておくことが非常に重要です。
◇サステイナビリティーを知る
昨今のファッションビジネスにおけるトレンドキーワードの一つに、サステイナビリティー(持続可能性)があります。当社は小売業ですが、どうすれば持続可能な取り組みができるのかを中長期的な視点で考えていかなければなりません。
サステイナビリティーは新たなビジネスチャンスでもあります。これまでは安くて良い物をできるたけたくさん作って売ることが正しいとされてきました。しかし、身の回りに安っぽい製品ばかりがあふれ、多くの消費者がやみくもに安さを追求することは良くないと気づき始めています。安く粗製されたものを避け、多少値段は高くても、安心できるものを選ぶ、大切に長く物を使うという意識に変わってきています。
また、サステイナビリティーがいわれるようになった理由の一つに人口増加があります。国連では2050年には世界人口が100億人近くまで増えると予測しています。モノが足りない時代が本格的に始まるということで、これに備えた動きでもあるのです。
◆組織図を自ら作る
会議を取材していて驚いたのが、参加者12人(SV6人、店長6人=今会議でSV昇格を決定)が約20店の来期の体制、組織図を自分たちで決めていた場面だ。エリアをいくつに分け、各エリアにどの店舗を配置するのか、エリアと店舗の長は誰にすると効率的かの意見、アイデアを出し合いながら議論を重ねていた。「現場の人間が自分たちで決めることにより、言葉と行動が変わり、在り方が変わる」(藤田さん)と考える。
会議に出席していた店長から、SVに昇格する人もいた。そのうち2人は同会議に初参加。出席してみての感想を聞いた。
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■比嘉一誠さん
会議の質の高さに驚いた。みんなが共通認識を持って会議に臨んでいるため、話がぶれないのが良いと思った。自身が開く会議も同様のレベルに達する必要があると実感した。新しい知識も得ることができ、モチベーションが上がった。今後はSVの役割をまっとうすることが最優先だが、経営に関する知識など視野を広く持ち、様々なことを学んでいかなければならないと感じた。(18年入社、19年夏に店長。アンディフィーテッド台場店、横浜店を担当するSVに昇格)
■佐山真洸さん
デジタルテクノロジーに関する部分が大変勉強になった。実店舗とECの相互送客などは店で働いているとなかなか意識が及ばない。これから自身が担当するエリアのスタッフに今回学んだ知識を伝授していきたい。これからは売り上げ・客数ともに大きい原宿地区の店舗を担当することになる。店舗でのイベント開催など販促に関する知識を学び、PR業務にも携わっていきたいと感じた。(16年入社。17年に店長。アンディフィーテッド原宿店、明治通り店、仙台店を担当するSVに昇格)
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《藤田GMに聞く、店長が知っておくと効果的な問題解決の4ステップ》
店長が知っておくと効果的な店舗運営ができる知識の一つに、問題解決のための4段階の原理原則があります。これを理解できていれば、自店で起こるおおよその問題を解決できるはずです。
まずは、現場で起きている問題を疑問文に直します。例えば売り上げが下がっている時。「どうすれば客数、もしくは客単価が上がるだろうか」というように、売り上げを構成する要素に分解して考えてみましょう。
次に、有効な事実データを集めます。自社の他店や他社で、客数、客単価の増加にうまくいっている例、データを集積します。その後、自店における解決策を考えましょう。
最後に重要なのが、その解決策は、いつまでに、誰がどのように達成するのか、コミットメントを考えることです。「いつ」「誰が」を明確に決めておくことが問題を解決するために重要です。
◇問題解決の手順
- 問題を効果的な疑問文に置き換える
- 事実データを集める
- 解決策を出す
- コミットメントにする
《バックルーム》
昨年、広島の有力専門店、エヌの中本健吾代表から「人材教育に関してスタージョイナスにサポートしてもらっている」と聞いたのをきっかけに、今回の取材をお願いした。実際、同社の会議の注目度は高く、2日間にわたるSV・店長会議中、視察に訪れていた業界関係者がいた。
座学の講師や、会議の進行を務めていた藤田さんが世の中の出来事や会社の方針、施策を〝自分事〟として考えるように説く姿が印象的だった。会議や実店舗を運営するのに必要な金銭的コストにまで言及し、「利益に変えるために一人ひとりに何ができるのか考え、行動して欲しい」と訴えていた。
藤田さんは、人の成長なくして、会社の成長はないという。たしかに今の時代、程度の良い商品は多くの店で流通している。そのなかでファッション小売りの成長を分けるは、最前線で仕事をする販売員一人ひとりの在り方なのだろう。