初任給で何買った? 23年春入社の新社会人に聞く

2023/07/17 06:30 更新


 初任給を手にするのは人生で一度きり。自分にとって特別な買い物をする人もいれば、家族やお世話になった人への恩返しに使う人もいることでしょう。物からコト消費を重視する価値観が広がるなかで、業界で一番フレッシュなファッション好きの皆さんはいかがでしょうか。23年春入社の新社会人に、初任給の使い道を聞きました。

ブローチでわくわくする時間を

タキヒヨー グローバルトレードグループサステイナブルチーム 國澤あや乃さん

國澤さん

 「何度も目で追ってしまう三つ」を選んだというタキヒヨーの國澤あや乃さん。ジャケットやシャツなどシンプルな服装が増えた社会人生活で、ワンポイントになるものを選ぶ時間があれば「わくわくするだろうな」と思い、初任給で購入したのはブローチだ。

 東京・西荻窪の雑貨屋で刺繍や陶器、ビーズや木でできたブローチを大学時代の友人と見た。どれもすてきで迷ってしまい、一度は店を出たものの帰りに再来店。母と叔母へのプレゼントと、自分用に購入を決めた。

「買ったころの新鮮な気持ち」を家族と共有するためプレゼント用も購入

 現在、自分用は気分に合わせて襟元に飾り愛用中。元々ブローチは好きだが、初任給をもらったタイミングで日々身に付けるものを買えば、「買ったころの新鮮な気持ち」を思い出すことができると考えた。それを身近な人とも共有したいと思い、家族へのプレゼント用にも購入した。母と叔母に直接手渡しできる日を楽しみにするとともに、「父には別のものを」と家族思いな國澤さんだ。

 6月まで研修中だったため、「働いている」という実感が湧く前に初任給をもらった。うれしい気持ちと、早く社会の役に立ちたいという感情が同時に押し寄せたという。研修では社会人基礎から繊維の勉強まで、「覚えることが盛りだくさん」の日々。7月に配属部署が決まり本格的な実務が始まった。

 息抜きはキッチンに立つこと。餃子(ぎょうざ)を作り、気持ちを整理する。社会人生活という目の前の階段を一歩ずつ上る。少し先の自分の力につながると信じて。

通勤は一目ぼれした自転車で

クロスプラス ODM販売部ODM販売2課 村井翼さん

村井さん

 初任給を受け取り、その額の大きさに「社会人としての実感が湧いた」という村井翼さん。アルバイトとは働く時間もお金も違い、改めて裁量や責任、関わる社会の広さも再認識した。

 そんな初めての給料の使い道は、「ルノー」の自転車だ。タイヤの小さいスマートな自転車には「あるミュージックビデオを見てからずっと憧れていた」そう。通勤時に最寄り駅までの交通手段が必要だったことも後押しとなり、クールな自転車で気分を上げたいと「店頭を探して一目ぼれした」この自転車に決めたという。

随所にライトブルーが映える、都会的なデザインに魅了された

 ブラックを基調としたボディーに、ライトブルーの配色がお気に入りだ。当初はオールブラックの自転車にしようと考えていたが、「都会的で洗練されたこのデザインに魅了された」。タイヤが小さい分回転数が多く、少しでも雨が降ると水が跳ねる。でもそれも気にならないくらい、こぎやすさも格好良さも「大満足」だった。車には興味を示さないのに、自転車に入れ込む村井さんを、両親は不思議そうに見ていたという。

 入社して、元プロサッカー選手から話を聞いたり、出張経験が豊富な人から体験談を教えてもらったり、関わる人の幅は格段に広がった。「色々なことを吸収したい」と貪欲だ。一方、「エクセル」の使い方から効率的な仕事の組み立て方まで、つまずくことの多い学びの毎日。趣味の筋トレやスイーツで息抜きも忘れず、いずれ全ての物事に楽しさを感じられるよう、「一つひとつ真摯(しんし)に取り組みたい」。

頭皮のかゆみに悩む父へ

マッシュスタイルラボ 「セルフォード」JR名古屋タカシマヤ店ショップスタッフ 中田さくらさん

中田さん

 「憧れのマッシュの一員」になり、初任給をもらった際は「このお金だけは使えないと思った」という中田さくらさん。自分に使うのはもったいないと感じ、給料日からほど近い父の日のプレゼント代に充てた。

 選んだのは、トータルビューティーブランド「ウカ」の「スカルプブラシ・ケンザン」と、頭皮のかゆみに特化した「シャンプー・アンチイッチ」。「父が普段から頭皮のかゆみに悩まされていて、色々なシャンプーを使っては頭皮に合わずというのを繰り返していたことを知っていた」からだ。スカルプブラシで名の知れているウカのタカシマヤゲートタワーモール店へ行き、親切なスタッフがお薦めしてくれたシャンプーとスカルプブラシをセットで購入した。

強すぎないミントの香りも決め手に

 例年はお酒を贈っていたこともあり、渡した際は「きれいな包装紙に戸惑っていた」そう。しかし、両親ともに「ぴったりだ」と喜んだ。「ささいなものでも家族が同じ気持ちで喜んでくれて、胸がいっぱいになった」という。

 学生時代まで人見知りで、極力、人とのコミュニケーションを避けていたという中田さん。「セルフォード」での販売を通じて話すことに楽しさを見出し、今では「誰かとのつながりやコミュニケーションが、自分を強く、心穏やかにしているのだろう」と思うまで成長した。そんな中田さんにとって、初任給は何物にも代えがたい意味のあるもの。残りは大事に取ってあり、いつか家族に旅行をプレゼントしようと計画している。

同期と買った香水がお守りに

デイトナ・インターナショナル 総合職 倉持萌花さん

倉持さん

 憧れだったアパレル業界で働くことができ、「毎日が新鮮で楽しい」という倉持萌花さん。4月から「フリークスストア」町田モディ店で販売やSNS運用、販促などの業務に励んでいる。「慣れないことだらけで毎日必死だけれど、体力をつけて頑張りたい」と意気込む。

 初任給の給料日はちょうど休みで、仲の良い同期2人と出掛けていた。「せっかくだし買い物しちゃう?」と、学生のころは高くて手が出なかった「ディプティック」の香水を買うことに。色々な匂いをかいでみて、「フィロシコス」という香りを選んだ。甘すぎなくて付けやすく、時間が経つとベビーパウダーのような匂いがするところを気に入っているという。

「今欲しいもの」が3人とも香水で、同じブランドで選び合った

 「記念の買い物を一人ではなく同期とできて楽しかった」と倉持さん。1カ月間、同じ境遇で頑張った仲間との思い出にもなり、お守りのような存在になった。店頭に立つ日は休憩時間に必ず付けて、仕事モードに切り替えるスイッチにしている。日々の業務は接客をメインに、店舗のSNS運用や「スタッフスタート」のスタイリング写真を投稿している。5月からはブログの更新やサンダルの販促を担当するなど、販売以外の業務も任されるようになった。

 就職活動はアパレル業界に絞って受けた。学生時代からアルバイトをしたいと思っていたが、コロナ下で募集がほとんどなく、挑戦できなかった。念願がかなった今、業界への憧れもやる気も人一倍で、「新しいことを吸収したい」と前向きだ。

仲良しの母にネックレス

ライトオン アリオ西新井店販売員 浦岡里佳さん

浦岡さん

 ライトオンアリオ西新井店スタッフの浦岡里佳さんが初任給で買ったのは、遊び心のあるデザインが豊富な「コーチ」の「チャンキー・シグネチャー・チェーンリンクネックレス」。仲良しの母へのプレゼントだ。

 お互いにアクセサリー好きなこともあり、母と一緒に買い物に行くことが多いという浦岡さん。特にコーチは、親子揃ってお気に入りのブランドだ。バッグやアクセサリーだけでなく、香水なども集めているほどの大ファンで、招待制のイベントに何度も参加したことがある。

「母によく似合っている」という「コーチ」のネックレス

 プレゼントに選んだアイコニックなゴールドのチェーンネックレスは、〝C〟のロゴマークとそこにあしらった小さなピンクのストーンが映える上品なデザイン。中間あたりからCが連なってチェーンになっている。試着をした母によく似合っていて、一目ぼれで購入を決めた。浦岡さんは「普段は華奢(きゃしゃ)なネックレスが多いので、新しいデザインのアイテムを贈りたかった」という。母も「自分で買うとしたら選ばないデザイン」と喜び、早速〝1軍〟アクセサリーとして活躍している。

 初めての給料をもらって感じるのは、「大人の第一歩を踏み出せた」喜びだ。得意の接客を楽しみながら、大好きなアパレルの販売現場で日々奮闘している。一方で苦戦していることは、覚える業務の多様さ。アルバイトとの違いに戸惑うことも多い。それでも「同年代の新社会人もみんながんばっている。助けてくれる上司や環境に感謝して、私も業界を盛り上げたい」と力強くコメントした。

(繊研新聞本紙23年7月7日付)

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