バイオベンチャーのスパイバー(山形県鶴岡市)は9月8日、新たに総額344億円の資金を調達すると発表した。これにより、同社独自の構造たんぱく質素材「ブリュードプロテイン」(BP)のグローバルな量産・販売網の拡大を加速する考え。
344億円のうち、244億円は投資会社のカーライルが100億円を出資するほか、フィデリティインターナショナルやベイリーギフォードといったグローバル投資家による出資、海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)による100億円の追加出資、東京センチュリー、山形銀行、佐竹化学機械工業からの追加出資で構成。残り100億円は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券がアレンジャーとなって昨年末に実行された事業価値証券化のスキームによる資金調達の追加分となる。
さらに、スパイバーはカーライルとクールジャパン機構からそれぞれ1人ずつ取締役を受け入れる予定だ。スパイバーは「両投資家が持つ知見、ネットワークを最大限活用できる環境を整え、大規模なグローバル展開を一層加速する」考え。とりわけ「カーライルのサステイナビリティー(持続可能性)分野における知見と、ラグジュアリーブランドおよび繊維業界との強力なネットワークを最大限活用することになる」(カーライル)。さらに「数年内に計画するIPO(新規株式上場)に向け、グローバルな機関投資家との対話を強化していく」という。
同社は今春、タイのラヨン県にBPの初の量産拠点を完工し、年内に商業生産を予定している。一方、米国では昨秋、穀物メジャーの1社として知られるADM(米イリノイ州)との間でBP原料の量産について協業する契約を締結。ADMによるプラントを早ければ23年に稼働させ、数千トン規模の生産能力まで拡大する計画だ。
同社は今回の資金調達も合わせると、この1年間で約650億円に上る。これにより、株式評価額は約1350億円(8月末時点では1153億円)となった。一方、有価証券報告書によると、20年12月期の営業収益2億円(前期は2億円)に対し、純損益は65億5900万円の赤字(同52億7100万円の赤字)。事業拡大に向けて研究開発投資と設備投資が先行し、赤字幅は膨らみ続けている。金融機関および投資家からの高い期待に早い段階で応えるためにもBPの量産・拡販が欠かせない。