シップス社長「消費不振は構造的問題」

2016/12/12 14:49 更新


 セレクトショップの草分け的存在であるシップス。上期(3~8月)は微増収微増益で折り返したが、今春以降の店頭の状況は決して良くないという。この間のファッション消費の停滞は、売り手側の提案力不足ばかりではなく、構造的な問題が大きいとの見方を示す。


(柏木均之)

 

 ファッション消費の悪さは昨年末から続いていることですが、セレクトショップに限らず業界全般に売れていない。理由は単純で、景気が良くなっているという実感があまりにも乏しいからではないでしょうか。店頭で見ていても、お客様は少しでも安いものを買いたいと商品をあちこち見て回っている。

 使えるお金が限られているから、お客様も財布のひもが固くなっていて、セールでも買わない。SC全体への来館客数が仮に減っていないにしても、そこへ入居する服屋への客数だけで見ると、コアな客以外の一般客は減っているというのが各社に共通した現象だと思います。

 当たり前に商品が売れない時期なので、各社ともいろんな打開策を講じています。当社も8月はセール後の秋物の立ち上がりを例年より早くしたのですが、今年に限ってあまり効果はありませんでした。要因ははっきりしていて、全店で同じ施策を打ったからです。

 今のお客様はニーズが多様化しており、同じシップスでも、出店立地によって客層も違い、買い上げ商品も微妙に異なります。

 来年以降になりますが、このことを踏まえ、今後は店のある場所ごとの売れ筋や売れるタイミングの違いを見極めて、品揃えを1店ずつ変えていこうと考えています。

 

 目先の悪さは構造不況ですが、それを乗り切るには、自社のお客様に対する誠実さが大事だと思っています。価格を引き下げて需要を喚起するよりは、今の価格はそのままで付加価値の高い感度のある商品を、仕入れでもオリジナルでも提供すること。値下げしてユニクロさんに勝てるセレクトなどない。

 当社もネット販売を行っており、そちらを通じて伝える工夫も並行して実施しています。店で見てネットで買うケースが増えても、当社のような業態は実店舗でお客様に知ってもらうことが買い上げにつながると考えます。

 ネット主力の業者さんもショールーム機能を持った実店舗を出していますが、実際に商品に触れないと買えない人が多いのが服です。それと、従業員の活気が感じられない店にはお客は来ないもの。店で働く社員には、お客様があってもなくても、ディスプレーを毎日変えるとか、何かしら常に動いて、入店したくなる店作りを工夫するよう、呼びかけています。

(繊研 2016/11/10 日付 19588 号 3 面)



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