最近のSHIBUYA109ラボでは、3月にSHIBUYA109の8階にオープンした「クリエイターコラボレーションスペース」で様々なテーマで学生との共創イベント「SHIBUYA109 YOUTH SUMMIT」を開催しています。「フラット&カジュアル」をコンセプトに、キャリアや政治について学生と考えるイベントは、インタビューなどとはまた違った形で彼らの世界を垣間見ることができます。
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5月のイベントのテーマは「LGBTQI+(LGBTを含めた多様な性)の当事者とのコミュニケーションにおける悩みの解消、そして当事者をサポートするために企業に必要な仕組みについて」でした。
身近だからこそ
LGBTQI+の権利を啓発する月間「PRIDE MONTH」にむけて、トランスジェンダー当事者としてジェンダー教育を行う3人組クリエイター「ミュータントウェーブ。」をゲストに迎え、学生に加え企業の担当者をはじめとした社会人も参加し、立場を問わず、同じテーマに向き合いました。
SHIBUYA109ラボの「Z世代のSDGsと消費に関する意識調査」(22年)の調査結果では、SDGs(持続可能な開発目標)17の目標の中で日本がより力を入れて取り組むべきだと思う項目第1位は「ジェンダー平等を実現しよう」でした。一方で、LGBTQI+の当事者とのコミュニケーションや社会のあるべき姿については「アクションをしたいと思っているが、どのようにすべきかわからない」と悩んでいる実態がみられています。
イベントでも、「いつから違和感を覚えたの?」「友達にカミングアウトされたらどのような反応であれば傷つけないか?」など、当事者に普段は聞きたくても聞けない質問が投げかけられ、当事者を傷つけないために知っておきたいことに、皆が興味津々でした。
今回のイベントで改めて実感したのは、若者にとってLGBTQI+当事者が身近な存在であるということです。参加した学生のほとんどが、当事者との接点をもった経験がありました。実際に参加した学生の持つ悩みも「友達からカミングアウトをされたときのとっさの反応で傷つけていたらどうしよう」「アルバイト先で提供しているサービスが男性用・女性用で分かれているが、理解や配慮に欠けている取り組みに自分が加担していると罪悪感を感じる」というように、非常に具体的なものばかりでした。
そして、今後は理解を深めるために勉強していることを周囲に共有したり、差別的な発言をしている人が社内にいたらその場で指摘するなど、アライ(性的マイノリティーの人たちを理解し支援する人)であることを行動で示していこうという力強い意欲もみられました。身近であるからこそ、実用性の高いサポート手段を模索しているのです
社会もアップデート
また、ディスカッションで多くみられたのは、「社会や上の世代の理解の促進」についてです。過去の私たちの調査でも、若者たちが最も課題に感じることは、「親世代のLGBTQI+に対する知識・理解が足りていないこと」でした。世代や生まれ育った環境によって、「普通」の定義が人によって異なることは避けられないことかもしれません。しかし、より多くの人が自分らしく、誰にも制限されずに生きることができる環境を作るために、思考や知識がアップデートされることは、今の若者の願いでもあります。
今回のイベントの企業の参加者からは「当事者や若者と話したことで、自分の感覚が古いと気付かされた」という声もありました。私自身も「ホルモン注射を受ける際に会社を休まなくてはいけない」など、当事者のリアルな課題を知り、個人としても企業としても、「誰もが生きやすい環境」を作るためにまだまだ改善できる状況があると気付かされました。
知った気になる・理解している気になるのではなく、当事者としっかり向き合い、彼らの世界に対する解像度を高めていく姿勢をとり続けることの重要さを改めて実感したイベントでした。