「シブヤ109ラボ所長の#若者の新しい上下関係」

2020/11/16 06:26 更新


 私はプライベートで母校の軽音楽部のコーチに行くことがあります。アラウンド20(15~24歳の男女)の生活に溶け込み同じ空間を共有することで、インタビューの時とは異なり、より自然な彼女たちの行動を通じてリアルな価値観が体感できる、今となってはとても貴重なフィールドワークの機会です。

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 通常であれば文化祭が行われる時期ですが、今年はリアルでの実施はなく、「オンライン文化祭」が開催されるようです。各部の活動を生徒が動画撮影・編集をし、ご家族向けに限定公開されるとのことで、先日その撮影日に立ち合いに行きました。

友達のように仲良し

 部活と聞くと、(学校や部活の風土にもよるのかもしれませんが)先輩・後輩の関係はかなり厳しく、先輩の言うことはほぼ絶対だし、後輩は口答えせずに応じる、というイメージが強いかもしれません。しかし中学2年生から高校3年生までいるその空間には、令和の価値観が根付いた新しい上下関係がありました。

 部員たちは会場の設営や装飾など、様々な業務を手分けして取り組んでいましたが、「私は○○が得意だからやっとくね。Bちゃんは△△が得意だからこっちをお願い!」や、「先輩、これはこうしたらどうですか?」などの会話が飛び交っていました。

 驚いたのは、後輩から先輩に自然にアドバイスをしており、それを何の違和感もなく受け入れている先輩の姿です。彼女たちは先輩・後輩、年齢や役職、という関係性にかかわらず、互いの得意なことや苦手なことを認識しあい、役割分担をしている姿が非常に印象的でした。

 普段行っているインタビューの中でも、学校の後輩と友達のように仲が良いという話や、先輩が後輩に教えてもらうという声も自然な形で聞かれています。目上の人に対するリスペクトはありつつも、上下関係に対する意識がゆるやかに変化している傾向にあります。

皆が生きやすい世界を

 この背景には、彼らの価値観が関係しています。彼らはSNSなどで多種多様な価値観に触れる機会が多いことから、「自分は自分」「他人は他人」「みんな違うことが当たり前である」という意識が強く、多様性を受容する風土を持っています。

 そのため同学年の人間関係の中でも、見た目や性格、キャラを中心に判断する、いわゆるスクールカーストのような構造は薄まり、様々な性質のグループがフラットな環境で共存する環境へと変化しています。

 このような価値観を持っていることから、年齢や性別、考え方や能力などの違いによって優劣を判断することはむしろ不自然かつ非効率であり、またこのような考え方が下の世代だけでなく、上の世代にも根付いた環境下で、新たな関係性のあり方が生まれているのです。

 私自身の学生時代と比較すると、驚きの変化でしたが、今の若者は人間関係において、〝皆が生きやすい世界〟を自然に作りあげることが上手だなと日々感じています。

 皆さんは、このような若者の実態や価値観について、どう感じますか?

 今後一緒に働く仲間として、あるいは顧客として接することが増えてくる今の若者ですが、新しい価値観に触れた時に、ただ否定したり、拒絶するのではなく、彼らのスタンスに倣って、互いに価値観を共有し合いながら歩み寄っていくことが、よりよい関係構築の第一歩となるでしょう。

●長田麻衣(おさだ・まい)
シブヤ109ラボ所長。総合マーケティング会社で、主に化粧品・食品・玩具メーカーの商品開発・ブランディング・ターゲット設定のための調査やPRサポートを経て現職。毎月200人の若者と接する毎日を過ごしている。好きなものは、うどん、カラオケ、ドライブ。今年の目標は、東京以外の道府県で若者セミナーに登壇すること。若者マーケターとしてテレビ出演も果たした。


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