ケイズデザイン(東京)の代表兼デザイナーの張敬唯(ちょうけいい)さんは24年春夏からレディスアパレルブランド「ルーミーココ」をスタートした。数回にわたる海外留学や日本企業でのブランド立ち上げなどを経て、「自分でゼロからクリエイションしたい」と夢を実現させた。
(森田雄也)
感情を落とし込む
ルーミーココのコンセプトは「ポジティブ・インパクト・フォー・ユア・ライフ」。心のゆとりを持ちながら、「〝いま・ここ〟という瞬間を大切に」との思いがある。明確なシーズンコンセプトは設けず、自身がその時々感じた感情を服に落とし込む。ベストなタイミング・アイテムを世に送り出すことを心掛け、少量生産でセールはしない。作り手・売り手・買い手のみんなが幸せで心地良い関係を目指すブランドだ。
24年春夏のファーストコレクションはワンピース5型、カットソーアイテム1型、シャツ1型、スカート1型を見せた。鮮やかな色と力強い柄を組み合わせたプリントや刺繍が持ち味だ。
前身頃を覆うほどの花モチーフが目を引くプリーツドレスは、刺繍とスパンコールを施し、太めのハンドステッチが印象的。生地はぬれたような艶感のサテンとビンテージ感ある100%リサイクルナイロンを採用した。税込み6万9300円。
オリジナルの大花柄のシアートップは、柔らかくストレッチ性のある薄手の天じくを使用する。スーパーロングの切り替え袖は重ね着で見せても、くしゅっとさせても可愛い。ウエストの両サイドにはギャザーを入れて細見えもする。2万4200円。
張さんは中国・大連市生まれ。8歳の時に両親の仕事の関係で来日し、高校は福岡県内屈指の進学校を卒業した。服飾専門学校に通いたかったが、両親と話し合い、文化学園大学に進学した。
思い断てぬ英留学
大学3年次には米カリフォルニアに語学留学。多様性や人間の幸せについての気付きがあった。帰国し、17年に文化学園大学を卒業後は、ロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズに3カ月留学した。MA(修士課程)を希望していたが、オファーされたのは入学準備に当たるファウンデーションコース。日本の大学で学んできたのに「あれっという感覚だった」。
短期留学を終えてそのまま帰国。「正直、このまま就職するかどうか悩んだ。つらい時期だった」と張さんは振り返る。
どうしても諦められず、訪れたのは中国だった。デザインに至るプロセスやクリエイティブな要素に課題を感じていたことから、北京にあるファッション留学をサポートする予備校に通った。24時間開放されており、「連日徹夜を続けポートフォリオ二つと洋服8体を完成させた」。最終的に当時希望していたロンドン・カレッジ・オブ・ファッションからオファーがあり、念願の進学を果たす。
厳しいながら充実した日々を過ごし1年半で卒業し、日本に帰国後、ヤングレディスブランドを扱う企業で、新ブランドの立ち上げに携わった。学んだこともあったが、企画に至るプロセスを含め「もっとクリエイションをしたい」と思い、退社。22年1月に開業届を出して、独立した。
アパレル企画の仕事を請け負いながら、資金をため、24年2月にルーミーココのECサイトをオープン。3月には東京・中目黒で初めての展示会を開いた。知人などが来場し、ファーストコレクションを手に取ってもらった。
今夏にはライフスタイルブランド「RC365」も立ち上げる。今はサウナハットのリリースに向けて動いている。