百貨店で、客の目の前でクレジットカードの決済手続きをする「面前決済」への移行が進んでいる。
これまで販売員が客からクレジットカードを預かり、客の目の届かない集合レジで処理するオペレーションが主流だったため、インバウンド(訪日外国人)を中心に不安を感じられることも多かった。6月1日に施行された改正割賦販売法で、小売り事業者はカード情報の適切な管理や不正使用の防止といったセキュリティー対策の実施が義務付けられたことも契機となっている。
改正割賦販売法は、安心・安全なクレジットカードの利用環境の整備が目的。世界で広がるキャッシュレス決済も背景にある。「クレジット取引セキュリティ対策協議会」が策定した実行計画では、対面販売の小売業は20年3月末までにPOS(販売時点情報管理)など決済端末のIC化が必要。決済時には客のPIN(暗証番号)入力も必要なため、改正割賦販売法への対応=面前決済という構図ができ、売り場内への決済端末の設置が求められる。
POSのIC対応と売り場への決済端末の導入は大手が先行している。三越伊勢丹は全店の約半数、東武百貨店は全店、大丸松坂屋百貨店は東京店、上野店で決済端末をIC化した。そごう・西武は7月末まで、高島屋は19年4月までに全店でのIC化を完了させるスケジュールだ。
そごう・西武は全店の売り場に「タブレットPOS」を約4000台導入する。「カード決済の透明性向上のほか、売り場を離れないことによる販売機会ロスの低減や盗難防止、レジ業務の大幅削減など、顧客と従業員の双方にメリットがある」。大丸松坂屋は「各売り場で決済ができることで多様化する決済方法にも対応できるようになる」と期待する。