レディスアパレルブランド「PoI」（ポィ）は、神本麻希子さんが23年春夏に立ち上げたブランドだ。セレクトショップの販売員とデザイナーブランドの営業を経て、1枚でもさまになるし、着回しも利くアイテムをリリースし、じわじわと人気が出ている。
（森田雄也）
自由に楽しめる服を
ポィは、言語の理解を超えた擬音で気持ちがつながることを表した造語。モード、フェティッシュなエッセンスを内包したアイテムを展開する。「1枚で着ても良いし、手持ちの洋服に合わせて着てもらっても良い」とデザイナーの神本さん。シーズンを越えて、自由な発想でアイテムを組み合わせ長く楽しんでもらえるような服作りをしている。
代表アイテムの一つが人気のチュールトップ。チュール生地に、神本さんがデザインした裸体女性の正座姿を横からみたモチーフを、フロッキープリントしている。遠くから見るとそのプリントが「タトゥーのように見える」のがポイントで、タトゥーに興味があるが、入れるのに躊躇（ちゅうちょ）してしまう女性の心理を表現している。23年春夏にブランドを立ち上げてから継続して売れていて、毎シーズンモチーフを変えた新型を出している。
着こなし方は中にキャミソールを着ると春夏らしくなるし、ジャケットのインナーにもぴったり。チュールトップの上に厚手のセーターを合わせ袖だけ出しても可愛い。税抜き2万2000円。
リボンジャケットも立ち上げから人気が続いている。ノーカラーで前身頃に二つのひもが垂れ下がっていて、前で結ぶとリボンになる。後ろで結んでも良いし、そのまま前に垂らしてもいい。ポケットはスマートフォンを入れた時に、横になって型崩れを起こさないように、あえて縦にしか入らないよう小さくした。春夏はポリエステル、秋冬はウール・ポリエステルと生地を変化させている。5万8000円。
24年秋冬のチュールトップは、蝶をモチーフにした新柄を企画し、リボンジャケットはブラウンを新色で出す。他にも、モヘヤセーターを着ても動きやすいようアームホールを広く取り、薄手に仕上げたフェイクレザーコートもイチ押しだ。
販売員、営業を経験
デザイナーの神本さんは福岡に生まれ、名古屋で育った。名古屋ファッション専門学校を卒業した後は、シップスでメンズの販売員として5年店頭に立った。昔から「トーガ」が大好きで、レディスの販売員にならなかったのは、「好きな服を着られなくなるから」。東京まで毎回足を運び、給料とボーナスのほとんどをトーガに費やした。
ある日、トーガが営業アシスタントを募集している求人を見つけ、すぐに住居を探し即応募。採用され、東京でトーガの営業としてバイヤーと商談する日々を送った。
9年間が経った頃、自身のライフステージの変化や「そろそろ後輩にポストを譲る頃合いかな」と感じ、トーガを退職。企業勤めだと時間的制約があるため、昔から思い描いていた自身のブランドを立ち上げた。
22年9月には、東京でポィのファーストコレクション展を開催。トーガ時代に営業で培ったパイプもあり、多数来場があり手応えを感じた。今では大手セレクトショップと取引を行うまでになり、地方の個店にも卸販売している。
3月には初めて名古屋で個展を開き、今秋冬の新作を披露した。名古屋ファッション専門学校の佐藤弥生学校長も来場し、その成長を喜んだ。佐藤学校長自身もポィのジャケットを愛用しているという。
