ピッティ・イマージネ・ウオモ展の特別イベントとして、いくつかのブランドがショー形式で新作を見せた。
(フィレンツェ=小笠原拓郎)
「フェンディ」は、フィレンツェ郊外にある工場を開放してファッションショーをした。緑豊かなトスカーナの工場では、バッグを作る職人たちが働いている。若い職人たちが、レザーをグレーディングしてカットした後に、バッグに仕上げていく。一つひとつ手作業で進めていく製造工程は工場といえども、工房に近い印象。その空間をショー会場に仕立てた。
春夏コレクションのカギとなるのは、ワークウェアを背景にしたスタイル。メジャーをスカーフのように首に巻き付けたスタイルから、タブリエ(エプロン)のようなアイテムを差し込んだスタイル、たくさんのワークコートなど、ワークディテールをふんだんに取り入れた。そこにフェンディらしい上質なレザーを取り入れたアイテムが組み合わされる。
フェンディのモノグラムは電子回路のようなジャカード柄、ミラノリブのニットトップにもワークディテールのポケットがついている。プリントシャツは工具の柄。実際に様々な工具を入れたタブリエも重ね着される。多くのステッチをそのままプリントにしてしまったアイテムもある。
ロングシャツやフィッシュネットのようなニットトップは、袖のパーツが外して着られるようになっており、ノースリーブのように着ながら袖のパーツをバックに向けてドレープたっぷりに揺らせて着る。一見モノグラムにも見える変形デニムのジャカード地も様々なアイテムに使っている。しかし、この抽象的なジャカード柄が持つ存在感は特別だ。
フィナーレにはデザイナーとともに大勢の職人たちが登場する。物作りの現場でのショーの持つリアルな楽しさとともに、この工場の持つ魅力も感じられるコレクション。屋上にはあふれるように緑が植えられ、周りのトスカーナの森の豊かな自然との調和を考えさせられる。世界中の全ての工場がこうした自然との調和を考えることはできないのだろうか。そんなことも感じたコレクション。
「ERL」は、米カリフォルニアをベースにするイーライ・ラッセル・リネッツが手掛ける注目ブランド。蛍光イエローの空間にギラギラのラメシルバーの服を揃えたショーはコンセプチュアルな仕上がりとなった。ディズニーランドのパレードソング、自由の女神像をイメージしたコスチューム、アメリカの断片を散りばめたコレクションが面白い。
ボディーを意識したスタイルも特徴で、タイトなレギンスとぴちぴちに体に張り付いたジャージートップといったアイテムが充実する。体とのコントラストでワイドシルエットやフレアラインのパンツも多い。モーニングコートのようなカッティングのクラシックなテーラードとギラギラのラメ素材とのアンバランスが楽しい。コンセプトは興味深いが、プロダクトのクオリティーがもっと高ければ、説得力が増す。