型破りなゴルフウェア「パーリーゲイツ」の30年㊥

2019/09/08 06:29 更新


《型破り・パーリーゲイツ30年㊥》ギアではなくブランドとして

 「パーリーゲイツ」も、初めから順風満帆だったわけではない。全く無名のオリジナルブランドであり、「発売からの3年間は全然売れず、きついものだった」(神谷勝弘取締役)という。それでもゴルフウェア市場で確固たる地位を確立できたのは、個性際立つおしゃれなウェア作りに加え、ショップ形式による販売と質の高い接客、顧客とのつながりを強める独自コンペ「パーリーゲイツカップ」などを継続してきたからだ。

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◆「映える」で推す

 ゴルフウェアの販売は一般的に、ゴルフ専門店やスポーツ専門店への卸売りが中心になる。しかしパーリーゲイツの場合は、旧サンエー・インターナショナルの他のファッションブランドと同様に、スタート段階から百貨店にインショップや路面に直営店を出し、その世界を表現・管理できた。結果的に「ウェアをゴルフギアではなく、ブランドとして定着させることができ、成長につながった」(TSIホールディングスの三宅正彦代表取締役会長)という。

 実際、パーリーゲイツの直販比率(実店舗)は高い。現在58ある直営店の売り上げ構成は55%、16のアウトレット店は27%で、合わせて80%を超える。

 これらの店舗には自前の販売員を配置。教育・研修を担うTSIグループの販売会社、エス・グルーヴが、パーリーゲイツの店長やスタッフ、新卒社員など階層別に月1回程度の研修を主催し、ゴルフファッションに特化して積み上げたオリジナルの接客ノウハウを伝授する。

 研修を指揮する角佳昭ヒューマンリソース事業本部本部長によると、「お客様がゴルフ場にいることをイメージできる接客をするよう」呼びかけている。例えば、接客トークで「ゴルフ場で映える」「緑に映える」といったブランド特有のフレーズを多用する。店内では強めの色柄に抵抗を覚える客にも、接客を通じてゴルフ場の緑を想像してもらうためだ。服への印象が変わり、おしゃれをしたい客の気持ちを後押ししている。

ザ・ハウス銀座店の堀之内未来さんは、18年9月に開催されたTSIグループのロールプレイング大会で、表現力部門賞を受賞

◆コンペで強固に

 顧客との関係をさらに強めているのが、パーリーゲイツカップだ。毎年、全国8カ所のゴルフ場を貸し切り、各120人規模の顧客が参加するゴルフコンペで、エントリー期間中にブランドの商品を一定額買い上げた客が出場できる。これを91年から毎年開催している。最大の魅力は、芹澤信雄や上田桃子らメジャーな契約プロとカジュアルに交流できること。毎年冬には、各エリアの優勝者と契約プロをハワイに無料招待して決勝戦を行っている。

 パーリーゲイツカップは、客同士が自慢の服を見せ合う場にもなっており、新たな購買意欲を喚起する役割も果たす。三宅会長は「皆で楽しんでゴルフをしようというパーリーゲイツの世界が体現されたイベントだ。こうした地道な活動をコツコツと続けてきたことで、ブランドがゴルファーに浸透していったのだと思う」と評価する。

直営店はブランドの世界を表現する場として機能する(ザ・ハウス広尾店のパーリーゲイツコーナー)

(繊研新聞本紙19年7月24日付)



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