《型破り・パーリーゲイツ30年㊤》意志ある仕掛けでゴルファー魅了 8期連続で増収
ゴルフウェアブランド「パーリーゲイツ」(TSIグルーヴアンドスポーツ)が今年、設立30周年を迎えた。旧サンエー・インターナショナルが自社ブランドとして立ち上げ、迷彩柄にチノパン、ハイカットスパイク、ポップでカラフル…と、これまでゴルフ用品になかったデザインやアイテムを次々と打ち出し、業界に新風を巻き起こしてきた。型破りなパーリーゲイツの流儀とは何か。
(杉江潤平)
パーリーゲイツの勢いが止まらない。19年2月期のブランド売上高(派生ラインの「マスターバニーエディション」など含む)は、前期比2.8%増の121億7300万円となった。これで8期連続の増収だ。17年度(9.1%増)、18年度(15%増)に比べると、伸び率は鈍化したものの、国内ゴルフアパレルにおけるシェア1位の座は堅守したと見られる。
◆やりたいことを
30周年にちなんだ大規模販促を連打した今第1四半期も、パーリーゲイツ単体で前年同期比12.9%の増収と、好スタートを切った。ゴルファー人口の減少や、国内アパレルの苦戦が続くなか、これだけの数字をたたき出す存在は異彩を放つ。
好調要因について岡田浩治事業部長は、「自分たちのやりたいこと・カッコいいと思うことをぶれずに続けてきたため」と言い切る。酒井昭征ディレクター兼チーフデザイナーも、「トラッドをベースにポップでカラフルというブランドらしさを守りつつ、毎シーズン〝ぶっとんだ〟企画で、新鮮さを打ち出してきた」と話す。
今春夏物なら、「アイム・パーリーゲイツ」の文字を服全面に描いたインパクトのあるセットアップや、定番のブランドロゴを2段に分けて表現したポロシャツなどが、ブランドのスタンスを象徴する商品だ。10月にはブランドカラーであるネイビーを排して黒をテーマカラーにした商品を揃え、良い意味で顧客の期待を裏切る。こうした開発姿勢はデザイナーブランドのようで、多くのゴルファーを魅了してきた理由だろう。
◆定番品が下支え
とはいえ、シーズン商品だけで毎期、大きな売り上げを作りだせるわけではない。パーリーゲイツのインショップを入れる百貨店のバイヤーは「来店客を飽きさせない仕掛けとともに、定番品もしっかり売っている」ことを評価する。
実はパーリーゲイツのベストセラー品は、キャディーバッグや帽子、カートバッグといったアクセサリー類。これらで売り上げ全体の約30%を占め、ビジネスを支えている。いずれもブランド初心者の導入アイテムやギフト用として定着しており、「定番商品に関しては欠品がなるべく出ないよう心掛けている」(岡田事業部長)。
さらに、シーズンごとに変わる打ち出し品は数量を確保し、広告・販促ビジュアルで露出するだけでなく、スタッフウェアとして採用するなど、全社的に推す。つまり、売るものを事前に明確にし、生産・宣伝・店頭が連動するというマーチャンダイジングの基本を徹底している。
販売、営業、MD、事業部長を経験し、25年以上、パーリーゲイツ事業に関わってきた神谷勝弘取締役は、「『良いものを作って、売ろう』という僕らのやり方はずっと変わっていない。それが結果として他ブランドと同質化せず、お客様の満足につながっている」と指摘する。
■パーリーゲイツ
89年にメンズ向けのゴルフウェアブランドとしてスタート。91年春夏からはレディスも始めた。現在、直営店数は74(直営ゴルフセレクトの「ザ・ハウス」3店と、アウトレット16店込み)。08年10月にはライセンシーを通じて韓国に進出。韓国での売上高(19年1月期)は日本円で94億4400万円(派生ラインの「マスターバニーエディション」「ジャックバニー」含む)。
(繊研新聞本紙19年7月23日付)