同性カップルの嶋田さんと加納さん 支援者と作るレインボーカラーの伊賀組みひも

2024/07/01 13:00 更新


総合企画を担う嶋田さん(左)と加納さん

 地域の人と共に、地域産業を盛り上げている同性カップルがいる。三重県伊賀市に移住した嶋田全宏さんと加納克典さんだ。組みひもの老舗メーカー、糸伍(三重県伊賀市)の協力のもと、レインボーカラーの組みひも商品を販売している。制作やデザインは地域のアライ(支援者)と共に行う。「伊賀市の人たちの温かさに触れ、自分らしく暮らせてとても幸せ」(嶋田さん)と話す。

(小坂麻里子)

啓発商品が契機

 LGBTQ(性的少数者)の象徴であるレインボーカラーの組みひも「虹紐(にじひも)」は、スマートフォントラップ、シューレース、ブレスレット、しおりなど身近に使える雑貨類を揃える。

 LGBTQイベントのほか、ホームページ、メルカリ、ふるさと納税返礼品、伊賀市内のアライである書店やパン屋などで販売する。

 糸伍との出合いは移住コンシェルジュに紹介され、虹色の組みひもブレスレットをプレゼントされたことがきっかけだった。糸伍はLGBTQフレンドリーのアライ企業で、LGBTQの啓発のために虹色の組みひもを発案していた。プレゼントに感動した2人は、糸伍の協力を得て虹紐の販売を開始した。

組みひもの虹色のシューレースなどを販売する

 「みえレインボーフェスタ」や「名古屋レインボープライド」などLGBTQイベントに「僕らの移住生活」という名で出展し、虹紐の販売で「伊賀組紐」の認知度を高めている。名古屋レインボープライドでは「SNSを見て買いに来た」という客もいた。

 制作は地域の人たちの支え合いで行われている。総合企画は2人が担うが、商品開発は糸伍の松田智行社長、商品デザイン、制作は組みひも職人の佐伯敦子さん、グラフィックデザインはアライの中出充佳さんが担当する。

移住者らと連携

 「同性カップルが自分らしく暮らせていることに感謝している」と話す2人の移住は、簡単ではなかった。

 大阪で同居していたものの、「自然が身近にある生活をしたい」という思いから地方移住を決意。ただ、「地方は特に難しいのでは」と思ったように、断られることが多く諦めかけていた。同性カップルに対しての理解の少なさや偏見の不安もあった。

 16年になり、伊賀市でパートナーシップ制度が導入された。これを知った2人は、「もしかしたら」と、問い合わせると、職員や移住コンシェルジュが親身に話を聞いてくれたという。同性カップルであることをカミングアウトした時は、大歓迎してくれ、移住の決め手になった。

 現在は組みひものほか、伊賀市に移住した移住者と虹色の伊賀焼を製造販売する「虹焼」、畑で栽培した野菜やハーブを販売する「虹草」などのプロジェクトが広がっている。地域の人と連携し、LGBTQに関する講演も積極的に行っている。

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