《ニュース2023》百貨店のインバウンド 免税売り上げ過去最高

2023/12/30 06:29 更新


国内客と同様な商品が好調(松屋銀座本店の免税カウンター)

 百貨店のインバウンド(訪日外国人)需要が急回復している。22年10月の水際対策の緩和以降、韓国、台湾、香港など、東アジアの訪日客が免税売り上げをけん引する。足元では東京、大阪などの都心立地の店舗を中心に、コロナ禍前の水準を超えて過去最高の売り上げに達した。

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今期計画を上方修正

 大手百貨店は今期計画を上方修正した。23年度の免税売上高は三越伊勢丹ホールディングスが914億円、高島屋が580億円、大丸松坂屋百貨店が544億円を見込む。各社ともにコロナ禍前の実績に対して2ケタ増となる。免税売上高が23年上期に過去最高だった松屋銀座本店や大丸・大阪心斎橋店は、売り上げに占めるインバウンドの構成比がすでに3割に達した。

 コロナ禍前と異なるのは、円安を背景に、ラグジュアリーブランド、時計・宝飾品など高額品の売り上げに占める比率が高まったことだ。三越伊勢丹は特選・宝飾品が18年の28%から44%へ、婦人服・雑貨が22%から28%に上昇した。一方で、化粧品は34%から12%へ低下した。客単価は18年度比67%増で、買い上げ客数に比べて、客単価の上昇が著しい。

欲しいものを吟味

 以前のような〝爆買い〟でなく、欲しいものを吟味して、気に入った物を購入する買い方にシフトしている。まとめ買いが減り、自家需要が目立つ。「国内客と同様の買い方に変化しており、外国人顧客の関心に対応した売り方でMDバランスを修正した」(三越伊勢丹)という。客単価はコロナ禍前に比べて7割上昇した。

 もう一つの特徴点が、中国以外の訪日客の免税売り上げ構成比が高まったことだ。松屋銀座本店の国・地域別シェアは、19年は中国81%、台湾、韓国、香港各2%だったが、23年上期は中国47%、台湾14%、香港8%、韓国、米国4%へと大きく変化した。

 免税売上高に占める中国の購入客の比率は、「コロナ禍前の7割に比べて落ち込んでいたが、現在は5割まで復調した」(日本百貨店協会)という。団体旅行客は減ったが、家族などの個人旅行客が増加している。

 三越伊勢丹は富裕層のニーズを掘り起こそうと22年10月、海外外商担当を新設し、専任担当者20人のチームを立ち上げた。23年度上期には外商顧客を1000人増やした。国内客と同様にリピート客など海外富裕層へのワン・トゥ・ワンのマーケティングで、新たな需要開拓に結び付ける狙いだ。

(繊研新聞本紙23年12月15日付)

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