【店長に聞く】新人教育どうしてますか?㊦

2019/05/06 06:28 更新


 春になり、多くの企業で新入社員が店舗に配属される時期がやってきた。人材獲得が難しくなっているなか、自店に配属された新人を育成し、定着させ、戦力化する重要性が増している。

 今回は4人の店長から、新人教育のコツについて聞いた。ほとんどの店長がまず性格を知ることに重きを置いているようだ。今の新人には、やる気を出させる働きかけも欠かせない。

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エテ心斎橋大丸店店長 江並由貴さん

萎縮させず共感の輪で接客と同じに向き合う

 エリアマネージャーも兼任する江波さんの担当エリアには、毎年4人前後の新人が配属される。入社前に基本的なマナーや社内ルールなどを学んでいるが、配属後は、学んだことが実践できるかを確かめつつ、現場で個人に応じた教育をする。

 新人と向き合う時、最初にすることは緊張の解きほぐし。卒業旅行の思い出など、気軽に楽しく話せる話題で心理的な距離を縮める。店内で円滑なコミュニケーションができるよう、新人の生活背景や性格をつかむことが重要なのだ。新人との間に入るサブ店長の育成も重視する。教育の負担が分散され、店のチームワークを高めることにもなるからだ。

 最近は、反射的に指示に従って行動するタイプが少なくなり、あからさまに褒めて欲しがる人が増えているのを実感しているという。強く指導をすると消沈することも多いため、「シュンとならず、ハキハキと受け応えができる言葉に言い換えるように気を付けている」。

 それでも落ち込んでいれば、その理由を根気よく聞く。間違っていることを正しいと誤解して覚えていることもあるからだ。そんな時は、なぜそれが間違いか、改めて説明してきちんと理解してもらい、改善に努める。

「個性を理解し共感をもって接することで、チームワークに溶け込みやすくします」と江並さん

 ミスや売り上げ数字が伸びない時のフォローは大切だ。努力した結果なら、そのことを認めたうえで原因を共に探る。事前に教えていなかったことが要因であれば、そのことを謝り、改善のためにどうすればいいか、一緒に考える。怒られたくないとか周囲に迷惑をかけたと思って萎縮して、成長が遅れることを避けるためだ。

 自身の新人時代に指導担当者が、共感を示して接してくれたことが救いになった経験が生きている。共感が良い結果につながる点で「新人に教える姿勢は接客と同じ」と考えている。

フレームワークルミネ大宮店店長 米田沙代さん

褒めてモチベーションアップ 伝わるまで丁寧に

 店長歴6年目の米田さん。新人教育ではよく褒め、わかりやすく伝わるまで丁寧に教えること大切にしている。

 接客の内容から備品の整理など小さなことでも具体的に言葉にして、モチベーションを上げ気持ちよく働けるよう心掛けている。褒めることを意識するようになったのは、先輩店長の「人を動かすには、モチベーションを上げることが重要」というアドバイスからだ。褒めることで店全体の雰囲気やチームワークも良くなり、新人も上司が見てくれている安心感を感じてくれるという。

 真面目でやる気があり、吸収したい、どんどん仕事を教えて欲しいと思っている新人は多い。しかし、働きかけや伝え方次第で、やる気をそいだり、意図を伝えられないこともある。

「部下の成長が何よりうれしい」と話す米田さん

 以前、自分で気づいて欲しいと思い、関わりすぎないようにしたが、新人は放っておかれていると感じてしまった。見てもらえていないと感じると、モチベーションは下がってしまう。その経験から、わからないことは丁寧に繰り返し教え、こちらが見ていることは言葉で伝えて、試行錯誤しながら工夫している。実体験も積み重なり「スタッフの成長で、やりがいを感じるようになった」という。

 新人がミスをしてしまった時も教育担当のスタッフが注意したあとは、スタッフや米田さんが場を明るくしたり、怒っているわけではなく「期待しているからだよ」と伝える。ミスに対してモチベーションを下げるのではなく、どうしたらよかったのかを考え、気持ちを作り直せるようにしている。

 今年の新人に向けて「仕事はマニュアル通りではないから、興味を持って取り組んで欲しい。積極的だと、仕事もより教えやすくなる」と話す。

(繊研新聞19年3月25日付)



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