【ニューノーマル新戦略】糸から最終製品まで一貫対応 吉田染工グループ

2020/11/06 05:00 更新



 糸染めの吉田染工と生地染めの貴志川工業からなる吉田染工グループ(和歌山県紀の川市、吉田篤生社長)。和歌山ニット産地の重要な染色加工拠点としてサプライチェーンを支えているが、この間、ホールガーメント横編機の導入や丸編みニット生地の企画開発、OEM事業などを手掛ける東京事務所の開設など、染色工場の枠を超える事業活動を加速してきた。吉田篤生社長にその狙いや、今後の展開を聞いた。

事業領域を自ら開拓

 ニット産地である和歌山で糸染めと生地染めの委託加工をメインに、いち早く自動化や合繊対応などを進めてきました。しかし、海外生産が増える中、「日本で生産する意味のあるものは何か、日本生産が求められるものは何か。それを知るためにはマーケットを知らないといけないのではないか」との思いが強くなり、17年に東京事務所「東京アッセンブルオフィス」を設立しました。アパレル製品のOEM(相手先ブランドによる生産)を中心に、丸編み、横編みを含めたトータルの製品開発、提案に取り組んでいます。アッセンブルには組み立てる、人が集まるという意味があります。デザイナーや異業種の経験を持つバイヤーなど、今までの吉田染工にはない得意分野を持つ人が集まっています。そうした経験を活かし新しいことにどんどんチャレンジして欲しい、製品事業の拠点として飛躍してほしい、情報が集まり、お客様が集まる場になって欲しいという願いを込めました。今後も新しい人材の採用を積極的に行い、さらに機能を強めていきます。

 こうした取り組みの狙いとしては「糸染めや生地染めが用いられる市場を自ら開拓していかなければ」というのが大きいですね。それには14年に導入した横編機も貢献しています。国内でも珍しい糸染めからテキスタイルまでの生産体制を構築し、海外展示会にも出展。インレイテキスタイルの生産が可能な島精機製作所の「SRY」14ゲージ3台とホールガーメント横編機「マッハ2X」18ゲージ1台に加え、今年には新しくミニタイプの15ゲージホールガーメント横編機も導入。機械の特徴にあった素材加工や開発を行い提案の幅を広げています。テキスタイルだけではなく、最終製品のサンプルや少量生産にも活用してグループとしてさまざまな角度から繊維業界に貢献出来るようなしくみの構築を進めています。

 国内物作りの活性化という意味では産地ブランド「和歌山ニット」の打ち出しにも力を入れます。最近では和歌山のニットメーカーとの協業も加速しており、企画から生産まで協業したプラットフォームを構築。県が支援する和歌山地場産業ブランド力強化支援事業としても採択されました。ここ数年吉田染工グループとして欧州海外見本市に出展してきた経験を活かし、「吉田染工に話をすれば、和歌山の生地が手に入る」という形も作れればと思います。和歌山県の力も借りながら、和歌山ニットブランドの更なるアピールに貢献していきます。

全自動染色システムで小ロット短納期に対応

自動化や多品種、エコ対応も

 生産性を向上させ、国内の物作りを支えていきたいとの思いから、吉田染工では90年代からチーズ染色ラインの全自動化に着手してきました。チーズ染色無人化プラントは染料の調合や染色釜への投入、糸の搬送などほとんどの工程で自動化、高い再現性と小ロット生産、短納期化にも対応し、1名のオペレーターで全ての染色機が24時間フル稼働可能な効率的な生産を実現しています。

 一方、生地染めの貴志川工業についても従来は綿などセルロース系の短繊維ニットが中心でしたが、複合素材など多様な要望に応えるべく、合繊用染色設備を増強してきました。ポリエステルやナイロンなど多彩な素材に対応し、現在では合繊素材の比率が約半分。合繊長繊維用の機械を改造して、短繊維染色のより高品位な染めを実現するといった活用も進んできました。最近では抗菌・抗ウイルス加工関連の受注が活発で、自社オリジナルの抗ウイルス加工も開発中。年内には新たな建屋が完成予定で、水洗機やテンターを増設し、納期・品質の更なる向上と対応素材の拡大を図ります。

 染色工場としてサステイナブルへの貢献も欠かせません。使用エネルギーを重油から天然ガスへ転換しました。排水処理という面では国内で最も厳しい瀬戸内海の基準をクリア。最近では排熱の再利用効率を上げるべく、熱交換器のエコノマイザーを更新するなど、より環境に優しい染色工場へと取り組みを進めています。貴志川工業ではエコテックス認証を取得しています。

糸から最終製品まで一貫提案


吉田染工株式会社 〒640-0411和歌山県紀の川市貴志川町前田16 電話0736-64-3339 info@yoshidasenko.co.jp

貴志川工業株式会社 〒640-0411和歌山県紀の川市貴志川町前田22 電話0736-64-2608 info@kishigawa-kogyo.jp

東京assemble office 〒130-0026東京都墨田区両国1丁目12-12染色会館101号 電話03-6666-9411

http://yoshidasenko.co.jp/



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