童話の世界へようこそ(若月美奈)

2013/10/25 13:04 更新


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これはぬいぐるみではありません。バッグです。大人向けで300ポンド(約4万5000円)。

 


アシュレイ・ウィリアムスのアライグマバッグと「白雪姫」の娘、アップル・ホワイト

 

セルフリッジ百貨店に18日、マテル社の新人形シリーズ「エバー・アフター・ハイ」が登場した。それを記念して、ロンドンの新進デザイナー4人がデザインしたバッグの1つがこれ。クラッチといえばいいのだろうか。

マテルの人形といえばバービーが有名だが、この「エバー・アフター・ハイ」はおとぎ話が終わった後の暮らしを想定し、登場人物の娘たちを人形にしたシリーズ。「ハイ」はハイスクール。つまり彼女たちは高校生という設定だ。白雪姫(スノー・ホワイト)の娘のアップル・ホワイト、眠れる森の美女(スリーピング・ビューティー)の娘のブライア・ビューティーなどが揃っている。

おとぎ話はハッピーエンドとは限らない。というわけで、娘たちも親の後をついだ良い子(Royal)と不良(Rebel)がいる。中には、白雪姫の義母の実の娘という設定のレイブン・クイーンのような親の後をつぐ不良もいる。

 今回、そんな人形たちをイメージしたバッグをデザインしたのは、2014年春夏ロンドン・コレクションで行われた若手合同ショー「ファッション・イースト」のメンバーであるアシュレイ・ウィリアムス、ライアン・ロー、クレア・バーローの3人と、ロンドン・メンズ・コレクションの若手合同ショー「マン」に参加したボビー・アブリー。それぞれ好みの人形を選び、そこからインスピレーションを得たバッグをデザインした。

3個ずつの限定で、おもちゃ売り場で人形と一緒に販売されている。デザイナーたちは人形のために1点ものの服もデザインし、それを着た人形たちも展示。

 


ボビー・アブリーのリュック・サックは「3びきのくま」の主人公の少女ゴルディ・ロックスの娘、ブロンディ・ロックス。
14年春夏コレクションにも登場したこのブランドのトレードマークのテディーベアと王冠のモチーフを使った 


クレア・バーローのバッグは「白雪姫」の義母の実の娘、レイブン・クイーン。蜘蛛の巣を描いたバッグは150ポンド


  
ライアン・ローは「不思議の国のアリス」のいかれ帽子屋の娘、マデリーン・ハッター。
14年春夏コレクションのバッグを、人形の髪の毛の色でつくった


実は、このニュースに1つの答えがあるように思う。ロンドンの新進デザイナーたちの次なる流れ、である。

最近はバーバリー・ブローサムやトム・フォードも参加して、よりバラエティーに富んだラインナップのロンドン・コレクションだが、長年世界的に注目されているのは新進デザイナーたち。そして、彼らのクリエーションは時代の気分やテクノロジーなどを背景に、キーワードで語れるその世代の特徴を持つ。それが明確なほど相乗効果を生みパワーを発する。

つまり、90年代のアレキサンダー・マックイーンやフセイン・チャラヤンの時代は「サヴィル・ローのテーラード技術を背景にエキセントリックなアイデアをプラス」、00年代末から2010年代にかけてのメアリー・カトランズやピーター・ピロットは「デジタル技術を駆使したプリントで主張する個性派ドレス」となる。

このメアリーたちも新人の域を超えて中堅にさしかかろうとしているここ1、2年、次なる流れが見えるようで見えなかった。それが、この「童話に通じるハッピーな世界にちょっぴり毒をプラスした新大人服」というわけだ。

そうしてみると、この流れはすでにファッショニスタを魅了している。オープニングセレモニーの2人がデザインする「ケンゾー」なども一連の流れといえそうだ。注目の新進靴デザイナー、ソフィア・ウエブスターもしかり。

そして何よりも、我同僚のマウイユウ。かぶり物が大好きな彼は、随分前から耳つきの帽子をかぶっているがこの秋それがさらにパワーアップした。今のお気に入りはコムデギャルソンの巨大なウサギ耳帽。これをかぶって一緒にロンドンやパリの街を歩くと、幼児から老夫婦までが寄ってきて、一緒に写真を撮りたがる。

 ファッションショー会場のおしゃれスナップの常連でもあるマスイユウだが、実はこの1ヶ月、彼のポーズに異変が起きている。それまで、口をすぼめてあごを尖らせ斜に構えて睨みつける、シャープな表情がお決まりだったのだが、最近はマクドナルドのドナルドよろしく口角をキュっと持ちあげ満面の笑みを浮かべているのだ。「なんで笑ってるの?」「なんかその方が逆に不気味かなって感じがして」。


 
 笑顔で決めるマスイユウ。
帽子はコムデギャルソン、トップはクリストファー・ケインというエッジーなブランドものをひょうきんに着こなす


子供達を幸せにさせるおとぎ話は実は残酷でシニカル。さて、読書の秋。ウン十年前に読んだきりでぼんやりとしかストーリーを覚えていない数々の名作童話を読み、最新ファッションの気分に浸ろう。



あっと気がつけば、ロンドン在住が人生の半分を超してしまった。もっとも、まだ知らなかった昔ながらの英国、突如登場した新しい英国との出会いに、驚きや共感、失望を繰り返す日々は20ウン年前の来英時と変らない。そんな新米気分の発見をランダムに紹介します。繊研新聞ロンドン通信員

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