【ウェアラブルの今 ミツフジ三寺社長に聞く㊦】市場の輪郭が見えてきた

2020/01/13 06:29 更新


 この1年で「ウェアラブル市場の輪郭がはっきり見えてきた」というミツフジの三寺歩社長。同社を取り巻く環境はどのように変わってきたのか。今後の方向性は。

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「とりあえず」はだめ

 ――この1年で何が変わった。

 この1年で良くも悪くも市場の輪郭がはっきり見えてきました。当社は現状、BtoB(企業間取引)がメイン。法人のお客様については、ウェアラブル事業を「やる」「やらない」がはっきりした1年でした。僕は「やらない」という選択も正しいと思います。3年前は「とにかくやらないといけない」という会社が多かった。

 衣服型のウェアラブル端末で高精度の生体情報を取得し、例えば従業員の体調管理をやりきろうとする会社と、そこまでの高い精度は必要ないとして(ミツフジ製品ではない)腕時計型を選択される会社もあります。いずれにせよ、意思決定できるようになってきたという意味でよい傾向だと思います。

 「やる」と決めた会社は意志が強い。今は建設業、製造業が主な顧客です。表には出せないですが、様々な案件が進行しています。事業化を前提としてミーティングに臨んでこられるので展開が速い。一方、悩んでいる会社に対して僕たちは、「『とりあえずやってみる』ではお金がもったいないですよ」と言います。「とりあえず」では絶対導入できない。ゴールのイメージがなければ、社内で説得できるはずがない。もちろん、僕たちも「とりあえずやりましょう」なんて言いません。迷われている会社に対しては、「ゴールを明確にして、アナログの議論をもう少し時間をかけてやりましょう」と伝えています。

ミツフジのスマートウェア

保険適用目指す

 ――技術・サービスで進歩したことは。

 このほど、医療の現場で一般的に使われているホルター心電計と同等の性能を持つ衣服型のウェアラブル商品を発売しました。保険適用の医療機器として承認を目指しており、承認されるとウェアラブル商品として、服として初めて保険適用されることになります。

 ホルター心電計は世界中で汎用的に使われている機器なので、世界へ販売する足がかりを作ったことになります。「衣服型のホルター心電計を売っています」と言えるのは、強いキーメッセージになると思います。

 僕たちは早い段階から病院と提携しながら技術開発をしてきました。医師は現場で使えるか、使えないかはっきり指摘します。これまで厳しくアドバイスをいただきながら、必要とされる水準を満たすものを目指して開発を続けてきました。日本で承認が取れれば、アジア、欧州での承認手続きもスムーズに進められると考えています。

 今後も開発にもっと力を入れたいです。機械学習やデータ分析などの領域で人材を増やしたいと考えています。量産をしていかないといけませんので、その背景も整えていきます。競争も激しくなるでしょうから投資も必要です。この先、しっかりと収益を上げ、実績を作っていきたい。そうすることによって、「確実にウェアラブルの市場がある」と証明し、市場のプレゼンスを高めたい。

(繊研新聞本紙19年12月25日付)



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