経産省が「ファッションの未来に関する報告書」策定 産地やデザイナー支援促進へ

2022/05/10 06:27 更新


 経済産業省は「ファッションの未来に関する報告書」を策定した。昨年11~12月に開いたファッション産業に関する有識者会議「ファッション未来研究会」(座長=水野大二郎京都工芸繊維大学特任教授)での議論の結果をまとめた。経産省では報告書で提起した政策課題を踏まえ、「国内産地企業やデザイナー・クリエイターの支援策を促進する」(商務・サービスグループクールジャパン政策課)方針だ。

(有井学)

 報告書は経産省のホームページで公開し、来年3月までメールで報告書に対する意見を募集、「今後の政策にも反映させる」。ファッション産業でのサステイナビリティー(持続可能性)の重要性の高まりを背景にした適量生産の仕組みの整備、リサイクル・リユース、資源循環システムの構築など「人と自然に調和的なファッション」、NFT(非代替性トークン)やメタバースの活用など「テクノロジーで変わるファッション」、海外需要獲得策などの「新たな価値を生み出すファッション」を柱とし、「ファッションの未来を描くために重要な」10項目を挙げ、それぞれの現状と課題を整理した。「創造性と経済性の両立」「DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進」など「ファッションの未来に必要な人材像」も提起した。

 NFTを活用したデザイナー・クリエイターの収益多元化や、NFTを含めたリセール市場での収益分配モデルの構築など「ファッションで稼ぐための新しい市場ルール」や海外需要獲得策などで政策提言も盛り込んだ。既に今年3月に日本のファッションデザイナーの商品をNFTで販売し、ブロックチェーンを活用してその収益をデザイナーに循環させる実証事業を実施した。

 国内産地企業と海外で活躍するデザイナー・クリエイターなどが協業し、越境ECを活用して商品を海外に販売する支援事業を21年度補正予算で措置し、今年度に実施する。さらに、越境ECを含めて日本企業が海外事業を行う際に「知識と理解が必要な」契約交渉に関わる事項や法律・制度などの「ファッションロー」を整理し、ガイドラインを策定する。そのためのワーキンググループを経産省内に近く立ち上げる。

 経産省はコロナ禍での環境変化も踏まえ、昨年に同研究会以外でも、複数の繊維・ファッション業界に関する有識者会議を立ち上げた。昨年11月に新設し、今年3月に全6回の会議を終えた産業構造審議会繊維産業小委員会も30年に向けた繊維産業のビジョンを示す報告書を近く公表する予定だ。

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