《めてみみ》運に頼らない

2026/05/27 06:24 更新NEW!


 極地冒険家の荻田泰永さんをご存じだろうか。1人でそりを引きながら無補給での冒険を繰り返しており、これまでに20回も北極を探検し、18年には日本人で初めて南極点に単独徒歩で到達した。

 そんな荻田さんが、16年にカナダ最北の村からグリーンランド最北の村まで約1000キロを歩いた時の話が興味深い。ゴール間近の長い下り斜面でクレバス(氷の割れ目)帯に入り込んでしまい、そのまま下り続けるか、引き返すかで葛藤したエピソードだ。

 40日を超える冒険で体力・気力は既に限界。「早く終わりたい」と気がはやるなか、事前に警戒していたクレバス帯に入り込み考え込んだ。「ここまで下りてきて問題が無かったのだから、この先も大丈夫では」「いやそんなことはない」。しばらくためらったのち「仮にうまく降りられても『運が良かった』としか言えず、教訓にはならない」と自分に言い聞かせ、引き返すことを決めたという。

 商売でも運良くうまく行く場合があるが、それを再現するのは難しい。一方で、うまく行かず失敗しても教訓さえ導ければ、同じ過ちは繰り返さないだろう。この話はそんな気付きを与えてくれる。荻田さんは10年後に同じ場所を反対側から歩いたが、予想以上にクレバス帯が広く、深かったのを確認した。「あのまま下りていたら僕は死んでいた」と語る。



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