26年春夏デザイナーコレクションで最も目立ったトレンドは、イブニングと日常着を融合した「デイリークチュール」。ハレの装いに日常の要素を取り入れ、こなれた感じに昇華させたスタイリッシュなスタイルだ。
この感じ、どこかで見たことがある。ふと思いだしたのは、98年に始まった人気の海外ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ(SATC)』の主人公、サラ・ジェシカ・パーカー扮するキャリー・ブラッドショーの着こなしだ。
ニューヨークに住む女性たちの生活をコミカルに描いた作品で、ドレスアップしてパーティーに繰り出す姿が見どころの一つ。ファッション好きの女性の心をつかみ、一世を風靡(ふうび)した。
21年には続編が開始、現在シーズン3が配信されている。50代になったキャリーが、ウエストをぎゅっと絞ったフレアドレスの上に部屋着のようなカーディガンを羽織って、ピンヒールのパンプスで闊歩(かっぽ)していた。都会的で抜け目のないスタイルなのに、気軽で親しみがある。その感じがシーズントレンドとシンクロする。
記者にとっては懐かしのSATC。初期のドラマを見返してみると、登場人物たちが日常のなかでファッションを純粋に楽しむ姿が散りばめられていた。その前向きなムードを現代のファッションシーンにもたらしたい。トレンドにはそんな願いがにじみ出ている。