《めてみみ》火鍋に学ぶエンタメ力

2025/04/10 06:24 更新


 休日の昼、観光客でごった返す歌舞伎町で火鍋店に入った。繁華街のビルの中にある300席の巨大な店。11時の開店直後、一番客として入店した。

 たまに食べたくなるうま辛の鍋。癖になる味は老若男女を引き付ける。その日は特に日本人の若者が目立った。店内はあっという間に騒がしくなり、正午を待たずに満席に。入り口には行列。相当な繁盛店だ。

 「ガチ中華」の人気に伴って火鍋ファンが急増する中、都内には専門店が増えている。その分、客は分散しているはずだが、これだけ多くがこの店に集まるのはなぜだろう。春のうららかな陽気は鍋には暑すぎるようにも感じるが。

 そんなことを考えていると、隣のテーブルでリボン状の麺が宙を舞い始めた。店員が麺を大胆に伸ばしながら鍋に投入するパフォーマンスだ。麺が顔にくっつきそうになる演出に、周囲もワクワクドキドキ。我も我もとオーダーが入っていた。

 最初から最後までおいしく笑顔で過ごせるように、面白い仕掛けがたくさん散りばめられていた。驚きのエンタメ力。リピート客が多いのはもちろん、満足させるおもてなしのうわさが友人知人へと広がり、ファンが増えていく構図が見えた。店を盛り上げるアイデアは無限大。常識というハードルを取り払い、トライできるかが鍵となる。そういう姿勢はどんな分野にも通じそうだ。



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