《めてみみ》霜降の日

2024/10/23 06:24 更新


 きょう23日は「霜降」。一年を24等分し季節の変わり目を表す二十四節気の一つで、文字通り霜が降り始め秋が深まっていく時期を示す。霜降の次は11月7日の立冬。店頭は冬物であふれ、衣替えなど冬支度を始める時期だ。季節の移り変わりに敏感な古来の人たちは、二十四節気に合わせた数多くの歌を残してきた。この時期を題材に詠んだ歌も少なくない。

 悲劇の皇子で知られる大津皇子の作とされる一首が「経もなく緯も定めず娘子が織る黄葉に霜な降りそね」。山の紅葉を乙女の織る布に例えながら、経糸と緯糸をきちんと織る機織りに対して、山の紅葉は自由自在に織った錦のような美しい布に見える。どうか霜が降らず、紅葉の美しさが続いて欲しいとの意である。

 昨今の地球温暖化、寒暖の差の激しさを見るにつれ、かつてあった季節感が年々失われていくような感覚になる。気候、気温に左右されがちな繊維業界。為替や株式市場の動向、世界各地の政治の変化や紛争と不透明な要因が重なり、経営者にとっては気の休まる暇もない。

 とはいえ、四季の細やかな変化を敏感に感じながら日々の生活を工夫し、人生を楽しむのは日本人の良き特性。インバウンドの増加もその良さを認めてくれているからだろう。万葉びとには及ばなくとも、四季をめでる余裕を持ちたいもの。その心の余裕が新しい発想を生み出す。



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