《めてみみ》映画『オデッセイ』

2024/09/18 06:24 更新


 15年に公開されたSF映画『オデッセイ』をよく見る。数名の調査隊が火星で砂嵐に襲われ、撤退する中で更なるアクシデントに遭い、マット・デイモン演じる主人公が火星に1人取り残されてしまうサバイバル物だ。

 劇中で次に地球から探査機が来るのは4年後。助かるためにはどうにか食いつないでいくしかない。植物学者である主人公が目を付けたのは備蓄食料にあったジャガイモ。空気のある居住エリアに火星の土を移し、調査チームが残した排泄(はいせつ)物を活用して畑を作り、ジャガイモを種芋にして栽培する。水や通信設備の確保など様々な壁に直面するが、創意工夫と粘り強さで問題をクリアし、収穫につなげたシーンが印象的だ。

 先日、キャンプブームで業績が飛躍したものの、その後の反動で現在は苦境に立つギアメーカーの社長を取材した。在庫がさばけず売り上げが半分以下に落ち込む中、改めて注目したのが「材料さえあれば物が作れる」自社工場の存在だ。SNSを通じてユーザーから直接注文を受け、必要な分だけを生産し現金化する。「苦しいが自分の知恵を試されている」とたくましかった。

 困難な局面に直面しても自らが持つ強みに立ち返り、最善を尽くす。奮闘する社長が映画の主人公と重なって見えた。消費者(視聴者)はそうしたストーリーに共感し、勇気を得て好きになる。



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