《めてみみ》裸の付き合い

2024/06/26 06:24 更新


 昨秋、九州の温泉地にある公衆浴場に行った際、何やら落ち着かないそぶりの韓国の若い男性を見かけた。慣れない日本式の風呂なのだろう。どこで脱ぎ、どうやって入るのかと、戸惑っている様子。身振り手振りでレクチャーすると、満面の笑みで喜んでもらえた。

 年を重ねるにつれ疲れが取れにくくなり、入浴という時間が大切になってきた。出張時は大浴場付きの宿を、海外に足を運んだ折には、異文化体験も兼ね公衆浴場を探すことが増えた。温浴治療の歴史が長い欧州は、水着着用・プール型の施設が意外に多い。

 少々戸惑うのはアジア圏の場合である。台湾ではこちらのゾーンは水着式、あちらのゾーンは日本と同様の全裸式と、分かれていたりする。韓国のホテルなどでは、フィットネスと全裸式の浴場がセットになっていたりする。あの若者と同じく当方もどこで脱ぐのか、どこからが全裸禁止なのかと大いに戸惑った。

 インバウンドの急増もあって、異文化交流が一段と活発化してきた。一方でオーバーツーリズム問題なども浮上、「〇〇人は…」という批判の声もしばしば耳にする。とはいえ、自国の常識は他国の非常識。郷に入っては郷に従えとはいうものの、不文律までを理解するのには互い時間がかかる。偏見を脱ぎ捨て、まずは一人の人間として〝裸〟の付き合いを忘れずにいたい。



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