カタログハウスが発行する『通販生活』に「老いるショック」というコーナーがある。イラストレーターのみうらじゅん氏や安齋肇氏が、老いに関する読者のユニークな体験を選んだものだ。24年の早春号には「タイマーがなぜ鳴っているのか思い出せない」などのエピソードが掲載されている。
一読者として楽しむ一方、還暦を過ぎた記者自身、確かにあれっと思うことが増えてきた気がする。体力的な老いはともかく、記憶力に関することも多い。顔はよく知っているが名前が出てこないなどである。
当初は、うーんと考え込んでしまう時もあったが、慣れてしまうとそう悪いものではない。先日も同年代の経営者と雑談している時、互いの老いの体験談で盛り上がった。こうした話は、年齢の離れた相手ではもちろん通じない。老い体験だけでなく、同世代だからこそ共有できる話題や価値観もある。若い人が同席していたなら、意味の薄い会話と思われるのかも知れないが、相手先との距離感が縮まることは確かである。
定年制の延長などを背景に、繊維・ファッション業界もシニア世代の活用がポイントの一つになってきた。デジタル化・効率化が加速する中で、若い人に頼る場面も増えてくるだろうが、シニア世代ならではの強みもあるはず。何を生かせるのか、しっかり考えなくてはならない。