ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が16年に母校の早稲田大学で学生と若手経営者を集めて「勉強会」を開いた。参加者の質問に答える対話形式だったのだが、傍聴していて印象に残ったやりとりがある。
ある学生が「25歳までに圧倒的な事業スキルを身に着けるにはどんな企業がいいか」と聞いた。柳井会長は「25歳までに圧倒的な事業スキルを身に着けるのは無理」と即答し、続けて「どんな仕事も10年くらい一生懸命やって毎日それについて考えるからスキルが身に着く」と言い切った。
「人間の能力のピークは25歳」が柳井会長の持論だが、それは努力しなくても何とかなる知力、体力を維持できるのは25歳までなので、それ以降も成長しようと思うなら勉強を続ける必要があるという意味だったようだ。
大学新卒の就職後3年以内の離職率は3割という。人と企業の間にも相性はある。合わないなら第二新卒に当てはまる年齢のうちに辞めるのは一つの手だろう。3年働いて転職し、キャリアアップを目指す人も最近は多いと聞く。
あれから8年後の自社の入社式で、柳井会長は新卒社員にこう話した。「まずは高いレベルで基本を身に着け、周囲の役に立ち、尊重される人になること」。3年でそれができるようになれば、転職しても働き続けても何とか道は開ける。個人的にはそう思う。