中国・西安で日本語の達者な観光ガイドにお世話になった。その方は父親が日本人と縁があり、自身も大学で日本語を学び、約30年ほど西安の博物館や名所を日本人に案内してきたのだそうだ。日本語で流暢(りゅうちょう)に解説され、故事や歴史的文物、そして『キングダム』の話題で盛り上がれたのはこの上なく良かった。
しかし、ガイド業はコロナ禍の沈静後も低調なままという。旅行者だけでなく、歴史学者や学生も減った。昨年から渡航規制が解除されたものの、日本人への中国短期滞在のビザ免除措置が停止しているため、復調もままならない。上海や北京の赴任者から月に2組ほど依頼があるが、このまま日本人が来ないようなら「ガイドから離れるかも」と寂しい表情だった。
西安に来る友達を紹介してと頼まれたが、この3月は日本人の駐在員の帰任数がとても多い。日系企業の中国での販売不振、ASEAN(東南アジア諸国連合)への生産・業務移転などが進み、人材も動き出した。中国は現地人材で回せばよいとして、一気に3人もの日本人を帰す企業もある。
人件費を含めた生産コスト、為替レート、リスクヘッジなど企業は合理的に考える必要があるだろう。ただ、言語・学術・文化交流が減ってしまえば、若い人の興味・関心が失われるのが心配である。良き方向への解決が早く望まれる。