アパレル生産の東南アジアシフトが加速している。1~7月の衣類輸入(速報値)では、1位の中国の割合(数量ベース)は57.3%で、2位のベトナムが15.2%、ASEAN(東南アジア諸国連合)は31.8%だった。10年前と比べると傾向がよく分かる。13年は中国が80%、2位のベトナムは7%でASEANは14.5%だった。
コロナ禍を機に柔軟で安定した供給網が求められ、生産地の分散が進む。中国での人件費の高騰やワーカー不足、チャイナリスクの回避も背景にある。一方で短納期、小ロット生産など「中国以外では対応できない」ことも多く、中国生産の重要性は変わらない。
今後、生産地がどう動くかを見通すのに縫製大手のマツオカコーポレーションの動向が参考になる。同社はベトナム、バングラデシュへの生産シフトを急いでおり、21年度に売上高の半分を占めていた中国は25年度には29%に下がる見通し。
気になるのは国内生産の減少に歯止めがかからないことだ。22年の衣類の輸入浸透率は98.5%で国内縫製は風前のともしび。できるだけ消費地に近い生産が納期や環境負荷低減の面でも重要になる。すでに「ニーズはあるのに作れない」状況になりつつある。繊維、アパレル産業に必要な機能を手放してはならない。それは縫製だけに限った話ではない。