《めてみみ》役割の大きさ

2023/09/15 06:24 更新


 帽子のブランド「キジマタカユキ」が、創立10年を記念して東京でインスタレーションを行った。新作を披露するとともに、「アンダーカバー」や「タカヒロミヤシタザソロイスト.」などとの協業作品を展示した。

 デザイナーの木島隆幸は、故平田暁夫氏の下で学び、独立した。前身のブランドを含めると、30年近く帽子と向き合ってきた。インスタレーションではアトリエを開放し、職人たちの仕事ぶりを公開した。スタッフがフェルトハットを木型に入れてアイロンワークで均一に伸ばしていく工程や、木島自らが手作業で帽子を縫い上げる作業風景を見せた。

 そこで感じたのは、帽子デザイナーでありながら、同時に職人であることだ。多くのファッションデザイナーは、デザインはしても自らの手で製品まで縫い上げはしない。しかし、木島はデザインだけでなく、物作りの現場で自らが作業する。様々なデザイナーから帽子の依頼を受けるのは、そんなスタンスのせいだろう。帽子の分野において、デザイナーでありながら物作りの現場を支えるプラットフォームとしての存在となっている。

 その存在を頼もしく感じながら、手仕事の技を後世に残すべく、職人を育てることにも期待したい。職人の後継者不足が叫ばれ、日本の物作りが揺らぐ中で、果たすべき役割は大きい。



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