セレクトショップで働くキャリア20年以上のベテラン社員3人に取材した。子育てしながら、ブランドのディレクターとして、PR担当を務めながらと、みなさん境遇は違うが、今も販売員、あるいは機会があれば店頭に立つ人ばかりだった。
接客販売の難しさとやりがいを両方とも味わった経験があるので、共通して「いつ、何を誰から買ったか、必ずお客様の記憶に残る」ことが身に染みている。「ECで何でも買える時代になっても店に立つことはとても大事」と口を揃える。
服好きが高じてこの業界に入ったので店頭に立つとき、どんな服を着るかも真剣に考える。来店客の視覚に入る自分の姿も接客の一部。「気合を入れておしゃれする」のは当然のことだ。
だから最近、店頭で働いていて「その服、どこの?」から始まる販売員同士の会話が減ったことが気になるという。他人の服装についていろいろと詮索(せんさく)する行為は今どきタブー視されるし、後輩の服装に注文を付けることはパワハラになってしまうからだろう。
「服についていろんな人と話し、時にダメ出しされたりすることは、服の着こなしを学ぶのに役に立つ」。自らの経験からベテラン社員たちはわかっている。伝え方や伝えられる側の気持ちをしっかり考えることが大前提だが、リアルで学ぶ機会が多いに越したことはない。