商況が大幅に改善している。本紙のファッションビルの月次商況調査によると、7月も全対象施設が前年超えで、伸び率も拡大した。百貨店を含め、コロナ禍前の売り上げを超える商業施設が増えている。新型コロナの感染法上の扱いが5類に移行してから、消費者の購買意欲は一段と活発だ。
一方、楽観視できないデータもある。東京商工リサーチによると、7月の企業倒産件数は前年同月比53.4%増の758件で、16カ月連続で増加。増加率はコロナ下で最大だった。産業別では小売業が58%増の79件、繊維・衣服関連の卸売業は前年7月の7件から17件に増えた。全業種を通じて「コロナ禍の影響が残る中で、物価高や人手不足が追い打ちをかけている」と同社は分析する。
政府が新型コロナ対策として実施し、繊維・ファッション業界でも利用が多い実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済が困難で倒産した企業も多い。ゼロゼロ融資利用後の企業の7月の倒産は61件で前年比74.2%増、20年7月からの累計で968件に達した。
既に政府は新たな借り換え保証制度など資金繰り支援策を行っているが、浸透しているとは言い難い。岸田文雄首相は物価高に対応する経済対策を9月にも策定する方針を示した。経営改善に苦しむ企業に対する政府のさらなる支援策が必要だ。