〝日常生活〟が戻り、街が息を吹き返した。リアルな店舗で会話を楽しみ、当たり前に買い物できることが、いかに貴重だったかを痛感したこの3年余りである。半面、この間はECの躍進が際立った。ネットに縁の薄かった年配の婦人たちからも、しばしばECで買うようになったという声を耳にする。
レディスインナーは、ECを伸ばした業界の一つだろう。ホームウェアや肌に優しいインナー、ナイトブラなど、身近な商品にスポットが当たった。仮に、ネットというツールが普及していなければ、現在の業界の姿はどうなっていたか。想像するのも恐ろしい。
今後のEC販売がどうなっていくのか、多くの人が関心を寄せる。ワコールの23年4~6月のEC売上高は前年同期比15%増、全社に占める構成比も23%まで高まった。中堅企業では、ヘヴン・ジャパンが24年3月期売上高を30%増の13億円、すててこが24年2月期で21%増の14億円強と、それぞれ予想している。
とはいえ、原材料価格の上昇をはじめ、送料の高騰、同業他社やモール間の競合激化など経営環境は大きく変化する。皆が果実を分け合える時代でもない。ある人が言った。「先端ツールを使いこなすことは今や当たり前。本当に消費者起点のビジネスモデルを徹底していけるか。本当の生存競争はこれからでしょう」。