《めてみみ》欲しい物を欲しい時に

2022/09/06 06:24 更新


 都内百貨店の夏物クリアランスセールは3年ぶりに7月1日から一斉に始まった。しかし、売り上げは今一つで、勢いは限定的だった。夏物は5~6月にプロパー(正価販売)の消化が良く、セール期に在庫が不足した。7月中旬でプロパーの売り上げがセールを逆転した売り場が目立った。

 新型コロナウイルスの感染再拡大で7月後半から客数が伸び悩んだが、外出や旅行需要が高まり、日傘、サングラス、帽子など盛夏の実需アイテムやキャリーケースが大きく伸びた。衣料品は秋のプレ企画、秋物のプロパー品が引っ張り差益率の改善につながった。

 単に夏物の商材不足だけでなく、「価格にかかわらず、欲しい物を欲しい時に買う」(伊勢丹新宿本店)という消費スタイルが定着した。セール期でも、価値と価格のバランスが合えば購入に結び付く。「欲しいブランド、商品は早く、確実に手に入れたい」という顧客からコートなど冬物の問い合わせが増えている。

 欠品による顧客の不満を解消し、機会ロスをなくしていくのが小売業の本来の役割である。セールのあり方の見直しは、商品の価値向上への機運を高めるきっかけになる。川上から川下まで適正な利益を確保し、セール頼りではなく、実需期に顧客が求める価値ある商品を揃えることで、新たな市場を創造する転機にしたい。



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