全国的に異例な早い梅雨明けと直後から続く猛暑に、体が悲鳴を上げている人が多いのではないか。東京は6月の最高気温が観測史上最高を記録し、熱中症の搬送者は過去最多となった。
政府はこの夏、電力需給のひっ迫を背景に、節電を呼び掛けている。今年5月に新設された「電力需給ひっ迫注意報」は6月26日以降、東京電力管内で連続して発令された。さらに7月1日からは、全国的な節電要請が始まった。9月末まで全国の家庭や企業に、「生活や経済活動に支障のない範囲」での節電への協力が呼びかけられている。
開発途上国に進出する際、現地の電力事情はリスク要因の一つとなる。スリランカの自社工場でフィットネスウェアを作る経営者から、停電を見込んで生産スケジュールを組む苦労話を聞いたばかり。しかし、先進国だと思っていた日本で、しかも、震災のような非常時でない平時に、節電要請が頻繁に出されるとは。
電力は国民の生活や経済活動に欠かせないインフラだ。政府がすべき対策は、ポイント付与や節電の協力要請のようなその場しのぎではなく、安心して毎日の生活や経済活動が行えるインフラを提供することではないか。梅雨明け以降の異常な気温上昇と厳しい暑さが続くと見込まれる今夏の長期予報が、日本のエネルギー政策に対する皮肉に思える。