《めてみみ》若い世代とオーダーシャツ

2022/06/27 06:24 更新


 あるメーカーは15年程前、東京でオーダーシャツの店舗を構える際、大学や高校に近く落ち着いた住宅街を選んだという。あえて集客力の高い商業立地は外し、今も営業を続けている。オーダーメイドはじっくり客の要望を聞き、相談に乗りながら客とスタッフが一緒に作り上げるプロセスも楽しい。この業態には向いている立地だろう。

 もちろん資金力があれば都心の一等地への出店も可能かもしれないが、経費面を考えると現実的ではない。何より、そのメーカーは国内の自社工場を安定稼働させるのが直営店出店の最大の目的だったので、リーズナブルな価格設定が欠かせなかった。敷居を低くして気軽にオーダーを体験してもらい、客の裾野を広げることが重要だった。

 その結果、当初の客層よりも若返り、現在は30代を中心に、20代の新規客も増えている。Z世代などの顧客は多様性を尊重する意識が高いので、服装についても体形にフィットするだけでなく、自分好みにカスタマイズできるオーダーメイドとの親和性は高そうだ。

 コロナ下でビジネス関連アイテムは厳しい状況が続いた。一方で、ECをベースにしたオーダーシャツの参入も目立つ。だからこそ逆に、リアルな店頭での採寸・接客を強みにオーダーシャツの魅力を伝えられれば、まだまだ成長する可能性は大きいだろう。




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