《めてみみ》国内回帰の中身

2022/04/04 06:24 更新


 「フル稼働状態が続いている」。年明け以降、国内縫製工場の社長から聞くことが増えた。コロナ禍当初のアパレルメーカーや商社からの受注激減という厳しい環境からは様相が一変したようだ。中国や東南アジアなど海外の生産拠点が都市封鎖などで供給が不安定なため、一部で国内回帰があるためだろう。

 ある東北の紳士服工場は大型ブランドの受注がなくなり、困っていたところにコロナ禍が拍車をかけた。それでも縫製できるアイテムの幅をカジュアル分野まで広げ、生産現場を維持してきた。だが、無理な対応をしてきた結果、納期遅れを心配する状況に追い込まれたという。

 地方の工場ほど外国人技能実習生への依存度が高い。実習生が帰国してしまい、入国の方も制限される中、縫製現場では生産能力が低下した工場も目立つ。だからといって、急に地元の若い世代を募集しても入社することはほとんどない。こうした慢性的な人材確保の難しさも背景にある。

 この間、手のひらを反すように国内回帰しているアパレルは海外生産と同様のコストを要求するところが多いという。工場側も「コスト至上主義のその場しのぎの相手とは取引しない」と強調する。都合良く工場を利用して使い捨てにするのだけはやめてほしい。今こそ、対等なパートナーシップを築き上げるべきだろう。



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