数字自体にさほど意味はないかもしれないが、時代の流れを感じた決算だった。第3四半期発表を終えた時点での通期業績予想は、ワコールホールディングス(HD)が売上高1840億円、ワールドが売上収益1831億円と、ワコールHDがわずかながら上回る見込みだ。
前者は米国会計基準で後者はIFRS。インナー、アウターと主力アイテムは異なる。何よりも両社共に卸・EC・直営店の販売、その他周辺事業へと事業構造が複雑化し、かつてのようにアパレルメーカーランキングという表現は意味が薄れている。業態の際がなくなるなか、ワコールHDもユニクロのインナー事業と比較されることが多い。
売上高をけん引した理由は明確。ワコールHDのセグメント別売上高予想では、国内ワコール事業が993億円で前期比15%増と回復、それ以上に海外ワコール事業が572億円、38%増と大きく伸び、海外売上高の構成比も31%と4ポイント近い上昇になる見通し。円安も売上高をかさ上げする。
同社の海外事業も安泰ではない。米国はデジタルプライバシー規制の影響で自社ECの成長が鈍化。中国のEC事業も新興ブランドとの競合が激しい。言うまでもなく海外は政治的なリスクも抱える。それでもなお、やはり海外に挑戦しないと企業成長は難しいことがより鮮明になってきた。