近頃、ファッションデザイナーから「メタバース」という言葉をよく聞く。メタバースは、コンピューターやコンピューターネットワークの中に構築された現実世界とは異なる3次元の仮想空間やそのサービスのこと。
先日の「ダブレット」のファッションショーは、渋谷スクランブル交差点を模した施設で開かれた。仮想世界ではなく、パラレルワールドのように存在するもう一つの渋谷スクランブル交差点に、バーチャルモデルやエキストラのアバターたちを集めた。コンピューターネットワークの中ではなく、超アナログなやり方でメタバース空間を表現したものだ。
あるデザイナーは、今はメタバースとリアルの過渡期だという。そして、ジムでワークアウトをするのと同じように、サイバー空間をのぞいて2時間ほどしてリアルな世界に戻ってくる生活を楽しんでいる。そんな習慣の中で、サイバー空間がファッションデザインの着想源にもなっている。例えば、サイバー空間にしかない色彩感覚がコレクションの中に自然に反映されるのだそうだ。
ひと昔前であれば、デザイナーは世界のどこかへの旅をクリエイションのテーマにしたものだ。そのエリア特有の文化をリサーチして、デザインに落とし込んだ。しかし、今やデザインソースは現実世界にとどまらない。そんな時代を迎えている。