「百貨店だけでは企業として生き残れない」と大手百貨店は不動産やカード・金融など百貨店以外の事業拡大に乗り出している。以前からの高コスト・低収益に加え、コロナ下の大幅な売り上げ減でポートフォリオの見直しに直面した。従来の構造改革のテンポでは今回の危機を乗り越えられないのは明白だ。
都内の電鉄系百貨店では百貨店事業の存続を左右する再開発が浮上している。小田急百貨店新宿店は再開発に伴って本館を解体し、跡地に地上48階の高層ビルを建設し、29年度に完成する。東急百貨店本店は23年春以降に解体工事に着手する。東武百貨店池袋店は駅西口再開発で建て替える。
電鉄系百貨店は百貨店単一のビジネスモデルではなく、百貨店を起点に物販・サービスなど多様な事業を組み合わせていく考えだ。百貨店で培ったノウハウを生かして新規事業領域を拡大する。とはいえ、新たな収益基盤の確立は容易でない。
電鉄はグループに不動産やカード、食品スーパーなどの事業会社を抱える。百貨店独自に顧客基盤を生かした新たな事業戦略を立てるのは難しい。ある電鉄系百貨店の幹部は「武器を持たずに戦うようなもの」と苦しい内情を吐露する。百貨店をやめて、ラグジュアリーブランドやデパ地下など強い領域だけ残して定借化するという単純なものでない。