《めてみみ》バトンタッチ

2021/04/21 06:24 更新


 古い画像を整理している時、ふと出てきたのがタビオの越智直正会長の写真。かれこれ20年以上前の写真になる。ソファに腰掛け、新作の靴下を試し履きするシーンだった。靴下を前にすると普段とは打って変わって、厳しい表情を見せる越智さんらしい1コマだった。

 コロナもあって、最近は本社への出社を極力控えているが、その分奈良県広陵町の自宅近くにある商品研究や物流の拠点、タビオ奈良に顔を出す機会が増えた。先日、思いがけずお会いした。傘寿を超え少し好好爺になった感だが、「どや、元気でやっとるか」と意気軒高だ。

 同社の21年2月期は赤字となり、自己資本比率も10ポイント以上ダウンした。コロナの影響がもちろんだが、越智勝寛社長が指摘したのは、OMO(オンラインとオフラインの融合)戦略の遅れ。システム面の整備は業界に先駆けて実行していたが、「OMOに関するリテラシーの社内格差が大きかった」と反省する。

 品質への妥協を許さず、店舗網を広げて成長してきた会長の時代。生活環境が激変するなか、新たな売り方を構築していかねばならないこれからの時代。同社に限らず、2代目、3代目へとバトンタッチしていく企業は多い。守るべきことと創業者の意に反してでも変えていくこと。事業戦略以上に、こうした人間模様も注視していきたい。



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