都内では桜が満開を迎えつつある。待ちわびた春の訪れとともに、本格的な展示会シーズンが始まった。
デザイナーコレクションに見る秋冬トレンドでは、官能的でロマンティックなスタイルが浮上している。春夏の「健康的でポジティブに前へ向かう女性」から、「艶やかに着飾って美しさをアピールする女性」へと大胆に変化した。色柄も、春夏はナチュラルや自然のモチーフを使ったものがメインだったのに対し、秋冬は黒と白がぐっと増えた。
パンデミック(世界的大流行)を経て、自然への憧れや自然の中での人間の在り方を描いたのが春夏。しかし、抑圧された日常生活の中で、自然へと思いをはせるだけでは人は物足りなくなる。より濃密な人間関係を求める気分が、艶やかで官能的な女性を描くことにつながった。春夏はハイファッションといえども、シンプルなリアルクローズへとシフトしたブランドも多かった。秋冬もその流れはあるが、機能的なデザインの中にもファンタジーを感じさせるスタイルが重要だ。
人間は社会的な生き物。他者との関係の中で生きている。長い冬が明け、再び人と出会い交流を深めていく時には、それにふさわしいファッションが求められる。着飾り魅力をアピールする服。それは快適な実用性だけでなく、ファンタジーにあふれたものとなる。