「お金とは拍手である」。放送作家の小山薫堂さんに聞いた言葉だ。店で買い物する際、商品を気に入ったとか、店員さんの接客が心地良かったとか、何かしら満足したことに対して拍手をするつもりでお金を払えば、客も店も気分が良いだろうという考え方だ。
近場の専門店とECモールで全く同じブランドの服を売っていたとする。モールの方が安く買えるしポイントもたまる。別のブランドの似た商品と画面上で比較検討もできるので便利かもしれない。
けれども、地元の専門店に行ってその服を見ている時に、店員さんが商品についてECと同じ内容を説明するだけではなく、どう着ると格好良く見えるか、手持ちのワードローブと合わせるならこういう風に着ると良いとか、親身になって押し付けがましくもなく教えてくれたら、ほんの少しは客の心を動かすだろう。
店で聞いたアドバイスを元に、結局客はECで買うかもしれない。でも、そういう心遣いが接客に込められていれば、少なくとも前よりは、少しだけでも客から愛される店にはなれる。
コロナ禍で20年は多くの店が閉店した。厳しい状況は21年も続く。やったからと言って、生き残れるかどうかわからない。それでも、どうやったら客に愛されるか、店は工夫を凝らすべきだと思う。一つでも多く拍手をもらうために。