来年3月11日で東日本大震災から10年になる。直後に被災地、仙台市に入り、大きな余震が続く中、専門店や工場を取材した経験は今でも忘れることはない。中でも、Tシャツプリント工場が全壊したアゾットとの出会いは大きい。今でも定期的に取材に訪れる。
被災で廃業した企業も多かったが、アゾットは早い段階で新工場の稼働にこぎつけ復興しただけでなく、この10年で大きな飛躍を遂げることとなった。震災の後も、昨年は水害に見舞われ、今年はコロナ禍と試練が続いた。相澤謙市社長は「創業から苦難の連続だった。その苦難を乗り越えた先に成長がある」と前向きな姿勢を貫いてきた。
昨年末には仙台市内で本社を移転し、業務提携しているデザイン工務店と共同オフィスを構え、建築・住宅とアパレルの両事業で連携し、相乗効果を発揮している。さらに、プロゲーマーからのTシャツ製造依頼をきっかけに、ゲームの世界に深く入り込んだ取り組みを開始。5月にeスポーツの会社、バサラを設立。夏にはeスポーツ施設も立ち上げた。
「ファッションで培ってきた感性や技術は応用が可能で相乗効果を発揮できる。アパレル業界にもまだまだ未来はある」と相澤社長。業界各社も、このピンチをチャンスととらえ、異業種と協業することで新たな分野を切り開いてほしい。