11月11日は靴下の日。大切な人に靴下を贈ろうという思いを込めて日本靴下協会が93年に制定した。以来、協会主催のメインイベントのほか、産地団体や個別の靴下メーカーが各地で様々に取り組み、業界を盛り上げてきた。
残念ながら、今年はその多くが中止となった。靴下の魅力を伝えていく「靴下ソムリエ」の認定試験や認定証授与式も休止。試験に向けて勉強に励んでいた人も少なくなかっただろうが、さすがにやむを得ない判断だった。
その11月11日に人生の大きな節目を迎えた人がいる。奈良県の中堅靴下メーカー、ヤマヤの野村泰嵩取締役事業部長だ。家業を継ぐ決意を込め、この日に婚姻届を出した。同社は天然繊維を中心にした自然派靴下に定評があるが、今後の営業強化、特にITやEC活用による新たなビジネスモデル作りが大きな仕事となる。
昨年はゼロだった自社ECサイト販売が今年は20%になった。東京・清澄白河には今秋、直営店「ヤハエ」も出店したばかりで、ECとの相乗効果を目指す。ヤハエの由来は200年以上前の祖業、繰綿問屋を営んでいた先祖の「綿屋弥平」にちなんだという。靴下業界を取り巻く環境はまだまだ厳しい。ただ、先人の思いを受け継ぐ若い人たちが新たな時代に挑もうとしている。どんな華やかなイベントよりも明るい話題だ。